リベラル派が与党化し日本の「翼賛政治」が進む ウクライナ侵攻で見えた日本のリベラル派の末路
日本の政治と世論の翼賛化が急速に進んでいる。強国化する中国への反感をベースに、ロシアのウクライナ侵攻が翼賛化に決定的役割を果たした。約1年前、2021年の日米首脳会談の共同声明は、日米安保の性格を「地域の安定装置」から「対中同盟」に変質させた。しかし、護憲を建前にするリベラル勢力は異議を唱えなかった。ウクライナ侵攻をめぐる対ロシア制裁や、「防衛装備品」の疑いのある防護マスクやドローンの供与にも、反対の声は聞こえてこない。政権の暴走にブレーキを掛ける勢力がいない翼賛政治は、極めて不健康だ。その経緯を振り返り、政権と一体化する原因と背景を探る。
小池発言で「市民権」を得たリベラル
「リベラル」という政治勢力が、全国メディアや世論で「認知」されたのはそう古くはなく、2017年10月の衆院選挙直前からとされる。民進党が分裂し、小池百合子・東京都知事が率いる「希望の党」への合流組と、民進党リベラル派を集めた「立憲民主党」(立民党)などに分かれたのが契機だった。
この時小池氏は、「リベラル派を『大量虐殺』するのか」と聞かれ、「(リベラル派が)排除されないということはない。排除する」と発言してからリベラルは「市民権」を得た。立民党を含め、日本共産党や社民党などに「リベラル」の形容詞がつくのである。
では「リベラル」とは、どんな政治姿勢に立脚しているのか。広辞苑はリベラルを「個人の自由、個性を重んずるさま。自由主義的」と説明する。しかしこれでは具体的政策イメージはつかめない。
保守与党・自由民主党の英語訳は「Liberal Democratic Party」だし、岸田文雄首相も自民党政調会長時代、「私はリベラル、ハト派」と自認した。ならば自民党も岸田氏も「リベラル」になる。
そこで、立民党の政治姿勢を、政治争点に沿って挙げれば、①憲法改正に消極的、②安保関連法は憲法違反として反対、③「共謀罪」法に反対、④原発ゼロを主張、⑤夫婦別姓に賛成、⑤首相の靖国神社公式参拝に反対、になる。少なくとも、リベラル派とは政権批判勢力という位置づけが成立する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら