リベラル派が与党化し日本の「翼賛政治」が進む ウクライナ侵攻で見えた日本のリベラル派の末路

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冒頭で書いたように、リベラル勢力の姿勢変化が表れるのが国際政治、とりわけ強国化する中国への評価だった。中でも香港政府が2019年、犯罪容疑者を中国大陸に送るのを可能にする「逃亡犯条例」導入を機に、200万人もの大規模デモ(主催者発表)を展開した民主化運動への同情と、これを力で封じた中国への反発は大きかったと思う。

立民の前身の民主党は2015年、安倍晋三政権による安保関連法案の大規模反対デモを展開したが、安倍政権は同年9月に過半数の反対(世論調査)を押し切り成立させた。安保法制での敗北は、リベラル勢力に大きな無力感と喪失感をもたらす。

香港の大規模デモが代償行為に

そこに降って湧いた2019年の香港大規模デモ。リベラル派とテレビなど全国メディアの香港デモ支援の背景は2つあったと思う。第1に「独裁中国」への反感と忌避感。そして第2は、「民意が政治を動かす」という直接民主の成果を、香港人が成し遂げようとしていることへの称賛である。リベラル派が自分たちの姿を香港に投影し声援する“代償行為”的支持とも言える。

1952年のサンフランシスコ平和条約で独立した日本は、戦争放棄をうたい「軍事によらない」日本国憲法と、日米安保を外交・安全保障の基軸に、「軍事による平和」を前提にする日米安保条約の、矛盾する「2つの法体系」の下で生きてきた。

高度成長期とバブル経済がはじけるまでは、左派が憲法を、右派が安保条約をそれぞれ掲げてきた。しかし政治的に対立しても、経済のパイ拡大には左右とも異論はなく、二つの法体系は矛盾を抱えつつも「共存」してきた。

しかし21世紀に入り、中国が政治・経済・軍事で台頭する一方、日本衰退が加速度的に進行する。「2つの法体系」の矛盾を封印し共存させてきた「経済的パイの拡大」は期待できない。この結果、安保法制が発効して以降は、「憲法法体系」の政治的影響力は急速に衰えていく。リベラル派が脱力する政治・経済の背景である。

バイデン政権は、中国との闘いを「民主vs専制」のイデオロギー対立と位置づ付け、台湾問題を攻防の中心に据えた。これと併行し、安倍政権以来の歴代政権は、台湾有事と尖閣(中国名は釣魚島)危機を煽ったことも、政治と世論に大きな影響を与えた。

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