リベラル派が与党化し日本の「翼賛政治」が進む ウクライナ侵攻で見えた日本のリベラル派の末路
世論でも「憲法」法体系の力は後退し、中国を軍事的に抑止する「日米安保」の法体系が優位に立つようになった。軍事力をちらつかせて統一を迫る中国に抵抗する台湾は、民主、自由、人権の「普遍的価値」を共有する日本のパートナーとして同情が広がった。
外務省が2022年4月20日に発表した「外交世論調査」で、対中外交で重視すべき問題として「領海侵入などに対し強い姿勢で臨む」が61.6%と最多になった。しかし、3年前から中国公船が日本漁船を追いかけ領海に入るケースの大半は、右派団体が雇った船の領海入りという挑発が真相だ。
日米両国にとって台湾の存在は、主要には中国を軍事抑止するカードとして利用することにある。台湾問題で語られる「民主」とは、中国抑止のための「価値観外交」の効果的な宣伝ツールだ。安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と公言するのは、南西諸島のミサイル要塞化など対中軍拡路線を加速させる政治的意図が潜む。同時に政治と世論の翼賛化という現状こそ、チャンスと見ているのだと思う。
自由な言論封じる翼賛
政界でも最大野党が“政権批判”党から“提案型”政党への脱皮を目指し、国民民主党は、2022年度の政府当初予算案に初めて賛成した。ここまでくると「翼賛政治」にブレーキは効かないとすら思える。
岸田政権で外相になった林芳正氏は、日中友好議員連盟会長を務めた後も自民党右派からは「媚中派」のレッテルを貼られている。連盟後任会長には小渕優子・元経産相が有力だ。
しかし彼女は、就任を躊躇しているという。「反中」が主流の翼賛政治・世論の「同調圧力」のため、とされる。中国やロシアに同情的発言をすれば、「選挙に不利」と本音を漏らす議員もいる。権力による言論弾圧がなくても、「翼賛政治」は、同調圧力という見えない空気で、自由な言論空間を封じる効果がある。それが日本の伝統的な政治・世論風土である。
日本国会は2022年3月23日、ウクライナ戦争の一方の当事者であるゼレンスキー・ウクライナ大統領に国会演説を許し、500人を超す超党派議員が詰めかけた。演説を聞いた岸田首相は「祖国と国民を守り抜いていこうとする姿に感銘を受けた」と述べ、共産党の志位和夫委員長も「祖国の独立を守り抜くという強い決意が伝わってきた」と、政権トップからリベラル勢力まで「祖国を守る戦争の正しさ」を一緒になって絶賛した。
政権とリベラルが一体化した、なんともグロテスクなシナジー(共振)。「翼賛政治」のただ中にいる実感が沸く。ゼレンスキー氏は、「ウクライナ民族主義」を掲げ、成人男子の出国を禁止し国民に戦いを義務づけている。
ロシア軍の侵攻は、国際法と国連憲章違反するのは明らか。しかし「国際紛争を解決する手段としての戦争」の放棄をうたう憲法を守らねばならない政治リーダーから「祖国を守る戦争」を讃える言葉は聞きたくない。この国会演説によって「翼賛政治が完成」という歴史評価が下されないことを願うばかりだ。
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