小田急、白いロマンスカー「VSE」がつけた道筋 現在は赤い「GSE」が箱根路のエースとして君臨

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小田急ロマンスカーVSE(写真:traway/PIXTA)
小田急電鉄はどのように進化を遂げてきたのか。ロマンスカーの歴史を中心に多面的にひも解くかつとんたろう氏の著書『小田急は100年でどうなった?』(交通新聞社新書)の一部を抜粋して紹介します。

2018年、真っ赤なロマンスカーが誕生した。GSE(70000形)だ。LSE(7000形)の運用開始から37年が経ち、VSE(50000形)からも13年、基本的には前者の置き換え、後者の増備として計画された車両だ。7000形の置き換えに70000形というのも、その代替わりを意識してのものだろう。

GSEの使命とは?

GSEの登場直前のロマンスカーは、展望席のないMSEとEXE(およびEXEα)に、懐かしくはあるものの古くなってきてしまっているLSE、そして箱根特急の主役たるVSEの4車種だった。特に展望席付きの最新車両VSEは2編成しかないため、特急券の売り切れも多かった。そんな中で登場することになったGSEは、箱根特急の新たな主力としても期待されていた。しかしまた、EXEのリニューアルやMSEの増備からもわかるように、日常の足としての需要もまた依然として高いものであり、この両方の役割を高いレベルでこなすことこそ、GSEに課せられた使命だった。

GSEのGはGraceful(優雅な)、その名前の通り「箱根につづく時間(とき)を優雅に走るロマンスカー」をコンセプトに、引き続き岡部憲明アーキテクチャーネットワークがデザインを手がけることになった。展望席を含んだ客室ガラスはさらに大きくなり眺望は向上、特に3次元にカーブを描く前面ガラスはエッジが交差したシャープな顔を演出するものになっている。

車体色は、全体をローラと呼ばれる薔薇系のローズバーミリオンとし、屋根にHiSE(10000形)を思い起こさせる真紅のルージュ・ボルドー、床下の足回りのカバー部にEXEαの基調色であるムーンライトシルバーを配し、側面窓の下には伝統のバーミリオンオレンジの細帯だ。つまりその真っ赤なボディの斬新さばかりに目が行ってしまうが、実はGSEはすべてのロマンスカーの歴史を集約した車両であると主張しているのだ。

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