小田急、白いロマンスカー「VSE」がつけた道筋 現在は赤い「GSE」が箱根路のエースとして君臨

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またロマンスカーの歴史上においての重要なトピックとして、新宿―小田原間の所要時間60分を達成したことを挙げておかなければならないだろう。2018年3月以降2022年現在に至るまで、土曜・休日ダイヤの「スーパーはこね」は、朝9時に新宿を出発し小田原に9時59分に到着する列車が設定されている。9時ちょうどに出発させているのは、小田原に到着するまで1時間を切っていることをアピールするためなのではないだろうか。

いずれにせよ、1948年に小田急が大東急から分離独立を果たした際に目標として掲げていた数字を、70年かけてやっと達成したのだ。もちろんそれまでのロマンスカーたちもこの数字を達成できるだけの能力は持っていたものの、線路容量の問題などが阻んでいた。しかし2018年3月に多摩川以東の複々線化工事が終了したことが、この偉業の達成を後押ししてくれたのだ。

そのような「箱根特急」としてのロマンスカーらしさが際立つ一方で、通勤通学用途に耐えられるだけの定員を確保していることも重要だ。またEXEαと同様、座席にはコンセントも用意された。車内Wi-Fiが用意されているのもビジネスユースにはうれしい。そのWi-Fiを通じて「Romancecar Link」に接続すると、2階運転室に装備されたカメラからの前面展望をリアルタイムで見ることができ、沿線情報などオリジナルコンテンツも用意されている。ちなみに2階運転室のロマンスカーとしては初めての、運転室へのエアコン装備がなされた。

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時代にあわせたバリアフリー装備なども備え、整備が進むホームドアの位置との兼ね合いから、展望席付きロマンスカーとしては初めて、連接台車ではなくボギー台車を装備することになった。GSEの2編成目の登場と同時にLSEが引退し、またVSEも2022年3月に定期運行終了、翌年秋には完全引退となるので、以降のロマンスカーはすべてボギー台車となり、連接台車の車両は消えることになっている。

すでに定期運行を終了しているVSE(50000形)に代わって、今はGSEが箱根特急のエースとなっている。しかし運用面では運行開始当初より、平日ダイヤにおいて夕方の下り「えのしま」号や「ホームウェイ」号にも投入されているなど、当初の計画通り日常の足としても使われている。箱根特急専用車のVSEの引退によって、行楽特急と通勤特急とを車両で分けることはなくなったロマンスカーには、今後どのような未来が待っているのだろうか。

早すぎるVSEの引退

2021年の年末、VSE(50000形)が2022年の3月をもって定期運行を終了、2023年の秋には臨時運行からも身を引き、完全に引退するという発表がされた。

運行開始から20年にも満たずに引退をするのは、過去のロマンスカーたちと比べても異例の早さだ。GSEが登場してからも、VSEはロマンスカーの二枚看板のうちのひとつとして活躍しており、突然の引退発表には本当に驚かされた。

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