広島サミットの影で起きた中東「晴天の霹靂」 イランとサウジが和解、アサド大統領を歓迎

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ここからのサウジアラビアの動きは迅速だった。

イエメンに対してはシーア派と停戦の交渉を始めた。シリアに対してはアラブ連盟の外相会議でシリアの復活を承認し、アサド大統領の首脳会議参加を実現させたのである。中東はこれまでの対立から平和へ、一気に舵を切ったのだ。

中東諸国がこれまでとまったく異なる動きをするようになった背景に、アメリカがこの地域に対する影響力を急速に失ってしまったことがある。

アメリカ離れ=親中、親露ではない

オバマ大統領以降の歴代アメリカ政権は、一貫して中東から手を引く方針を維持している。それは中東側から見ると、アメリカはもはや当てにならない、自分たちのやりたいようにやるしかない、という空気を生み出したのである。

その結果、敵対関係にあった国同士が手を握り、当面は戦いよりも和平と安定、経済政策重視にかじを切ったのだ。もちろんアメリカ政府はこうした変化について公式に反対、非難しているが、サウジアラビアはまったく意に介していない。

重要なのは中東のこうした新たな動きが西側諸国にとって、あるいは国際政治全体にどういう意味を持つのかだ。いくつかのことが指摘できるだろう。

まず各国ともアメリカの顔色をうかがって外交をする必要がなくなったが、だからといって親米国家だった国が急速に中国やロシアに傾斜しているわけでもない。

「今の国際制度の中で米中いずれかを選択しなければいけないという考え方自体が問題だ」(UAEのガルガーシュ大統領外交顧問)というように、地域の結束を重視しつつ独自性を発揮した外交を展開していくことになるだろう。

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