中国、イランで相次いだ権威主義国家の揺らぎ SNSとZ世代による抗議運動は何を意味するか

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11月下旬以降、代表的な権威主義国家である中国とイランで大規模な国民抗議運動が起こり、政府が対応策を実施するという出来事が相次いだ(写真・Bloomberg)

中国とイランの国内各地でほぼ同じタイミングで政府批判デモが起き、両国政府が重要な政策の変更を余儀なくされるという珍しい出来事が相次いだ。

新型コロナウイルスの発生源とされている中国はコロナウイルスを「悪魔のウイルス」と呼び「全面的な人民戦争」が必要だとして、人々の行動を厳しく規制する「ゼロコロナ政策」を維持してきた。

アメリカをはじめ多くの先進民主主義国で感染が拡大し多数の死者が出る中で、中国の感染者数や死者数は極端に少なく、民主主義に対する権威主義の優位性が明らかになったとして世界に自慢する看板政策となっていた。

中国市民の積もった不満が爆発

ところが11月下旬、新疆ウイグルのウルムチ市の高層マンションで起きた10人死亡の火災がきっかけとなって、ゼロコロナに対する国民の積もり積もった不満が爆発した。コロナ規制のため消火活動が遅れて被害が大きくなったという情報が拡散して、全国20都市以上でゼロコロナ政策を批判するデモが同時に起きたのだ。

北京などでは若者が一斉に白いA4のコピー用紙を掲げて歩く「白色運動」を展開した。白い紙は言論弾圧への反発を示したとされており、中東などでのカラー革命を連想させる行動で人目を引いた。デモ参加者の一部は習近平国家主席や共産党一党支配に対する批判にも言及していた。

この動きに対して中国政府は全国に数億台設置されているといわれる監視カメラによる顔認証システムや携帯電話の位置情報などを駆使してデモ参加者を特定し拘束するなどいつもどおりの厳しい対応をしている。

その一方で、驚くことに突然、ゼロコロナ政策の緩和を打ち出したのだ。自らの非を認めることのない共産党が、あっさりとデモの要求を受け入れるなどこれまでならありえないことだ。

もう1つの国、イランは厳格なイスラム教国家である。女性の人権は抑圧され出かけるときは髪を覆い隠すヒジャブの着用が義務付けられており、宗教的制約に対して若者を中心に反発が出ていた。そして9月下旬、首都テヘラン市内で22歳の女性、マフサ・アミニさんがきちんとヒジャブを着けていないとして、女性の服装を取り締まる「道徳警察」に拘束され、その後死亡するという事件が起きた。

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