スルガ銀行、セゾンとの提携に賭ける「再出発」 ビジネス転換とカード脱却、両社の思惑が一致

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スルガ銀は2018年3月末時点で2035億円ものシェアハウスローンを抱えており、不良債権化すれば経営危機に発展する懸念があった。ところが、投資家との和解が成立したことを受け、2020年からローン債権の一括売却を実施する。

債権譲渡は2022年9月までに計4度実施され、計1655億円の売却が完了した。残るシェアハウスは賃貸物件として安定稼働しているものもあり、スルガ銀は通常の投資用不動産ローンと同様のリスク管理区分に移管。今後、追加で費用が発生する可能性は低くなった。財務面でのシェアハウス問題にケリがついたことは、セゾンがスルガ銀への出資に踏み切る好材料になった。

一方、15%という出資比率にとどまったのは、その後に不正案件が顕在化した1棟アパート・マンションローンが響いた可能性がある。こちらは現在も弁護団との交渉が継続中で、スルガ銀はこうした「組織的交渉」を行っている投資家向けの1棟ローン債権を904億円(2022年末時点)抱える。

セゾンは3月から4月にかけて、スルガ銀の資産査定を行った。係争中の債権については担保や引き当てなどで9割以上が保全済みで、スルガ銀側は「早期解決を目指す」という説明をセゾンに行っている。

とはいえ、交渉の着地点はいまだ見えない。今回の出資比率からは、持分法適用会社としてスルガ銀の利益をグループ取り込めるギリギリの水準である15%の出資に抑えたいという、セゾンの意図が透ける。

ビジネスモデルは転換できるか

提携により、再出発を図るスルガ銀。スルガ銀が実行する住宅ローンにセゾンが保証を付けたり、セゾンのクレジットカードをスルガ銀の顧客に販売したりする協業を描く。

加えて、セゾンは投資用不動産ローンを実行する「セゾンファンデックス」や不動産開発を担う「セゾンリアルティ」も抱えており、スルガ銀の本丸である投資用不動産分野でも協業の余地がありそうだ。

スルガ銀が2023年4月に公表した新中期経営計画は「Re:Start 2025」と銘打つ。2025年までに不正案件の処理やビジネスモデルの転換を進めて再出発を図りたい構えだ。セゾンとの提携は、その試金石となる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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