大学教授が「学校に行かなくてもいい」という理由 不登校の子に必要なのは「サード・プレイス」

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つまり、何かが試され、評価される(学業、スポーツ、技芸、やる気、性格なんか含めて)場所だから、本当にくつろげるかといえば、そうでもなかったりする。なんかあまり呼吸しやすいところではなく、なにかが「測られている」ところだ。そういう場所になっていることを「学校化」された場所と呼んでみれば、それは君たちの行っている学校だけではない。

父さんや母さんだって、企業とか会社で働くわけだが、そこはノルマだとか業績だとか売上だとかいう結果が求められるところだ。それに応じて課長とか部長とか、そういう序列化された場所だからホッとできる場じゃない。でも必要なお金を稼ぐためにしょうがないから行く。いつも能力や結果を問われている、息も詰まる「学校化」されたところだろう。

家にも居場所がなかったら

だから、疲れた顔をして電車に乗っているおじさんやおばさんも、家に帰れば「今日もいろいろあって疲れたなぁ。やっぱり家(うち)が一番だ」なんて思いながら、お風呂につかったりしている。ここだけは、結果も能力もあまり問われない、ホッとできる居場所だと。

こういう場所を「愛の共同体」なんて呼んだりする。「愛の」というのは、何があっても「あなたはそのままでいいよ」と言ってもらえるという意味だ。共同体は、「序列や業績を問われる組織」ではなく、血縁や地縁でつながった「生まれる前からある最小単位のカタマリ」だ。お前はどうしてここにいるのだと質問されない場所だからホッとできる。

しかし、そんな家も、ところによってはあまりホッとできない、いつも結果を問われる、学校化されている場合となっているかもしれない。「◯◯高校に入らなければ、◯◯大学に合格しなければ、お前の人生には意味がないんだよ」と、12歳ぐらいから毎日言われ続けたら、そこはホッとできるところにはならない。いつだってテストの順位を問われる序列化圧力に満ちた場所になってしまっているからだ。

業績が悪化してボーナスが減ってしまった。社運をかけたプロジェクトで赤字を出してしまって、責任をとらされて、1500キロも離れた土地に単身赴任を命じられて、「そんなとこアタシは行かないから」なんてツレアイさんに冷たく言われる。実家から借金して開いたお店をつぶしてしまったため、親戚から無能者扱いされる。……結果しだいで「そんなことでどうする!」と怒られるような場所になっていないだろうか?

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