大学教授が「学校に行かなくてもいい」という理由 不登校の子に必要なのは「サード・プレイス」

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だから、学校(会社)が辛くて家に帰ってきても、そこも辛かったら、人は居場所がないということになるのだ。

これは、各人ぜんぶ事情が異なるから、決めつける言い方や、すべてに当てはまることだ、なんて言い方もできない。でも、学校も家も両方あまりくつろげないという気持ちで、なんか行き場がないよと思っている人はきっといる。

いるのだ。

だから、「学校なんて命かけていくところじゃない」と僕に言われても、不登校の君は、「家にいても『この子はどうして学校に行ってくれないのかしら』って、母さんが毎日泣いていて、ちょーウザいんですけど」と思っているかもしれないから、解決になっていないことになる。

綾小路きみまろという芸人のネタに「お父さん、会社にも家にも居場所がありません! ホッとできるのはトイレの中だけです!」(お客さん爆笑)というのがあるけど、そういう気持ちの中高生だっているはずだ。

だとすると、居場所がない人たち(父さん、母さん、君たち)には、1番目の家でもない、2番目の学校・会社でもない、ホッとできるもうひとつの場所、サード・プレイスが必要だ。

「サード・プレイス」とは学校でも家でもないところ

僕は、クラスを生きのびよ、学校をサバイブせよ、そのためにスプーン1杯の勇気と、いろいろやり過ごすための知恵をつけよと言った。そして、それがどうしても苦しくてやり過ごせなかったら、行かなくていい。正しく、賢く逃げよと言った。

でも、逃げた先にあるのが、学校化されてしまった家だったり、転校先の全寮制の軍隊生活だったりしたら、逃げた意味がない。だから、なんとかホッとできて楽しく暮らせる居場所、サード・プレイスを見つけなければならない。よそがダメなら、あらゆるお願いと作戦をたてて、家の中にサード・プレイスをつくり上げなければならない。そうでないと呼吸ができないからだ。

これは、住んでいる地域、近所の人たち、街の広さ狭さ、呼吸ができる施設があるかないか、そういう事情によってさまざまだ。近所がみんな顔見知りで、「あいつは学校に行ってねぇぞ」なんて、すぐにバレてしまう田舎はキツい。空気がよく、食べ物も美味しく、のんびりして人々が優しく善良で、駐車場が無料で、戸締りも必要ない。いいところかもしれないけれど、キツい。

だからこれに関して、オススメの街があるよなんて言えない。とにかく、自分が呼吸のできるサード・プレイスを探す、つくる、教えてもらう、仲間と協力してみる……いろいろとやらないといけない。でも、そういう場所が必要だと思っている人たちは、結構たくさんいるし、そういう人たちをつなげることを仕事にしている大人も、けっこういるのだ。

自立のためだ。ギリギリの力を出そう。

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