バリスタがもてなす「マックカフェ」別業態の正体 マクドナルド「本気カフェ宣言」で国内249店に

拡大
縮小

ブランドの強みよりも、スープ専門店やベーカリーカフェを意識したような商品には、業界関係者から疑問の声も上がった。15店の独立型店舗をテスト展開したが、翌2008年から縮小。同年に通常のマクドナルドで発売した「プレミアムローストコーヒー」が大人気となり、同社のコーヒーの年間販売数は約1億7000万杯→約2億6000万杯(当時)に増えた。

こうした試行錯誤の歴史から年月を経て、カフェメニューも見直して商品や接客を充実させていったのだ。

女性だけでなく、幅広い層に利用してほしい

マックカフェ バイ バリスタの店舗数は拡大したとはいえ、まだマクドナルド店舗数(2964店=2023年4月末現在)の1割弱。広告訴求を含めて女性向けに思えるが、顧客対象もその層なのか。

「現在のコアターゲットは20代~30代の女性ですが、さらに幅広い方にご利用いただきたいと考えています。SNSでも『季節限定のフラッペを試したいけど、近くのマクドナルドにはない』という声もあり、より多くのお客さまにお届けするのが課題のひとつです」(亀井さん)

東京都心の六本木ヒルズにある店舗と地方の店舗では客層も違うだろう。飲食チェーンでも立地によって少しメニューを変える店があるが、商品展開についてはどうなのか。

「マックカフェ バイ バリスタは、店舗立地で客層が異なっても出るメニューはあまり大きく変わりません。インテリアなどの内装は少し変えていますが、お客さまは手軽にご利用いただいているようです」

今年から、「本気カフェ宣言」を掲げた同社。業態としての「マックカフェ バイ バリスタ」は、実店舗運営を通じてマーケティングの場にもなる。亀井さんはこうも話していた。

「『食事と一緒に楽しめる自由さ』も持ち味です。マクドナルドの食事と一緒に“最高のカフェ体験”をより身近に感じていただきたいと思います」

「手軽さ」「入りやすさ」は、日本1号店から半世紀にわたり培った同社の持ち味。カフェ業態もハードルを高くしないで展開するようだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

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