日経平均が3万円を超えたら次の目標はいくらか 3万円到達がいよいよ間近、1990年高値に挑戦へ

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だが、市場にはまだまだ弱気論が多い。例えば、インフレの好循環が期待されている一方で、「3%を超える大幅の賃金上昇は今期だけだ。来期は再び0%台に戻り、株価も失速する」という意見は根強い。

あるいは「植田日銀は『YCC(イールドカーブコントロール)政策を当面続ける』と言っているが、6月と7月の政策会合を終えた8月あたりには、政策金利は0.8%くらいになる。しかも、利上げをやめるアメリカとの金利差が縮まることで急速なドル安円高となり、株価は失速する」という市場関係者は少なくない。

直近では「今回は、アメリカの債務上限問題はかなり深刻だ。地銀の破綻も相次いでおり、大きなリスクになる可能性がある」など、弱気話を挙げればキリがない。

しかし、東証プライム市場の売買代金が連日3兆円前後の大商いになっているように、多く出ている売り物は確実に拾われている。その結果、空売りが貯まり、それがさらなる上昇のエネルギーになるという典型的な大相場型の様相を示している。

日経平均は1990年の3万3100円台を目指す

さて、15日以降の当面の日本株はどうなるだろうか。このところの世界市場で年初来高値を更新している主要指数といえば、ドイツのDAX、フランスのCAC40、インドのSENSEX30、アメリカのナスダック総合指数、そして日経平均だ。

とくに日経平均については「今週3万円到達」と掲げることは、期待でも無理な予想でもなく、ほぼ現実的な数字になった。

引け値ベースで見ると、先週末12日の日経平均は2021年11月24日の2万9302円66銭を抜いて、同年11月16日の高値2万9808円12銭が射程内に入った。これを抜くと同年9月28日の3万円(3万0183円96銭)はすぐ先で、惰性で抜ける距離だ。

そして同年9月14日の30年ぶりの高値と言われた3万0670円10銭を抜けば、いよいよ平成バブル崩壊の過程で、最後の力を振り絞って戻り、それが「奈落の底への1丁目」になった1990年6月7日の3万3192円50銭に挑戦ということになる。

夢だと思い、もう2度と来ない領域だと思っていた世界が戻ってこようとしている。到来すれば、実に感動的な場面となる。

それはそうと、まずは今週だ。重要な材料は日・米・中の経済指標である。日本ではカレンダー順で企業物価指数、1~3月期GDP(国内総生産)速報値、4月のCPI(消費者物価指数)、アメリカでは4月小売売上高、月鉱工業生産・設備稼働率、中国でも4月小売売上高、鉱工業生産の発表などが目白押しだ。

もし今週高くなると、さらに売りを建てたり、ベア(弱気)型のETF(上場投資信託)を買ったりしたくなる投資家は増えるだろう。「セル・イン・メイ」の格言どおり、見事な高値圏になるからだ。

しかし、MMF(マネーマネジメントファンド)などにたまっている待機資金は、世界的にも高水準であり、前出のように、上昇のエネルギーになるベア型のETFの残高は着実に増えている。ここは売ってよいかどうか、慎重に考えるところだと思っている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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