イオンが首都圏スーパーを次々に「呑み込む」事情 いなげやを連結子会社にするに至った背景
スーパーに行くと、一般的には左側入り口から壁に沿って青果、鮮魚、精肉、惣菜売場と右回りの主通路があり、内側に工業製品(飲料、グロサリー、日配、雑貨など)の棚が固まっているというパターンが多いことはなんとなくご存じだろう。
ではなぜ、生鮮、総菜売場が壁に沿って配置されているかと言えば、それは壁の裏で各売場の商品をカットしたり、パック詰めしたり、調理したりしているからだ。多くのスーパーではその作業過程があえて見えるようにガラス張りの壁にしているところが多い。
それは来店客に対して、「今、裏で切りました、詰めました」と商品の鮮度をアピールするためであり、こうした方式で運営するのが日本のスーパーの標準、インストアオペレーションということだ。本来のチェーンストア理論からすれば、こうした流通加工工程を各店舗に分散することは非効率であり、センターでまとめて作業した後で完成品を配送するほうが効率的(人件費がかからない)なのだ。
では、なぜそうするのか。かつて消費者がセンター加工のスーパーは鮮度が悪いと判断して、淘汰した歴史があるからだ。こうした経緯で日本ではセンター供給型のスーパーは受け入れられない、という「都市伝説」ができた。しかし、イオンはこの「都市伝説」に挑戦する実験を行って成功した。それが、まいばすけっと、である。
「まいばすけっと」は何がすごいのか
「まいばすけっと」は、首都圏の人口密集地(23区内、京浜間)に店舗をほぼ限定。生鮮、惣菜+トップバリュを中心とした商品をセンターから供給するため、粗利率が高く人件費、物流費を抑えられるミニスーパーだ。1000店舗で売上高2000億円と、安定的な黒字を確立したという。
この成功をベースに、首都圏でより標準的サイズの店舗展開ができるようになれば、イオンの食品スーパーは圧倒的に低い損益分岐点のフォーマットを実現し、ライバルを圧倒するようになるはずだ(損益分岐点が低い≒売れなくても儲かる⇒ドミナント出店可能)。
その要件は①人口密集度が高い、②物流効率の高いドミナント、③ブランド力の高いプライベートブランド(PB)、ということになるだろう。こうした状況を踏まえれば、イオンの行動の背景がよく理解できるはずだ。
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