誰が乗る?タイに渡った元JR北「キハ183」ツアー 参加者はほぼ地元客、まるで「昭和の団体旅行」

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このキハ183ツアーは団体旅行による貸切列車としての運行だが、チケットはほかのタイ国鉄の列車と変わらず、国鉄公式ページからオンライン購入できる。言語を英語に変更し「Exploring Thailand by Train」の欄から一覧に表示されている任意のツアーをクリックするだけだ。しかし、各ツアーの発売は1~2週間前にならないと始まらないため、外国人観光客にとってはややハードルが高い。しかも、アクティビティの内容などツアー詳細はタイ語でしか紹介されていない。つまり、タイ国鉄はキハ183ツアーに対し、そもそも外国人をターゲットとしていないことがうかがえる。

ツアー名はズバリ「KIHA」。現地での観光はもちろん、キハ183に乗車すること自体も売りにしている。公式ページからオンライン予約し、各自プリントしたQRコード付きのEチケットでそのまま乗車できるタイ国鉄だが、キハ183ツアーでは、ホームに設置された特設の受付でこのEチケットを首下げ式の参加証に引き換える。受付の周囲は桜のデコレーションが施され、スタッフたちも日本風の半被を着用して雰囲気を盛り上げている。ちなみにスタッフは、タイ国鉄から委託されている旅行会社の人間で、団体ツアーのオペレーションは手慣れたものだ。各ツアーの企画も旅行会社に任されているようだ。

キハ183ツアーの受付
乗車前にホーム上でEチケットを掲示し、受け付けを済ませてから乗車する(筆者撮影)
キハ183ツアー受付のスタッフ
受付では日本風の半被を着用した旅行会社のスタッフが出迎える(筆者撮影)

「日本の車両」を全面に

キハ183の乗車がメインイベントということもあって、参加者は受け付けを済ませるやいなや、車両との記念撮影に余念がない。7時15分を過ぎると先頭車付近は黒山の人だかりで、きれいな編成写真を撮ろうとする鉄道ファンは注意が必要だ。それにしても、現地の人にここまで愛される日本の中古車両はなかなかないのではないだろうか。かつて日本を走っていたという車両の物語性をここまで昇華したタイ国鉄はあっぱれである。

車内は試運転時と変わらず、あらゆる部分の日本語表記が残されたままになっており、日本から来た車両であることを全面に打ち出している。発車すると、車内では各車両に乗り込んだ旅行会社のスタッフによるキハ183の車両紹介が始まった。ただ、全てタイ語である。この先の観光ガイドなども全てタイ語で、外国人には厳しい。手っ取り早いのは、英語のわかる参加者を見つけて、友達になることである。

車両紹介と並行して、弁当(朝食)、飲み物、スナック類の配布が始まった。乗車時間は1時間ほどしかないので非常に慌ただしいが、これもツアーの1つの目玉である。今回のツアーでは、弁当が使い捨ての箱ではなくキハ183デザインの弁当箱になっており、オリジナルグッズとして持ち帰ることができる。この手のお土産は毎回変更され、弁当箱の代わりにタンブラーだったり、団扇などのオマケもついてきたりすることもあるようで、次回の乗車を促す憎い演出である。

キハ183ツアーの弁当箱
キハ183をデザインしたオリジナル弁当箱。ツアー回によってデザインが変わることもある(筆者撮影)

この日は弁当箱のほか、C56形蒸気機関車のキーホルダーと、鉄道グッズではないが仏様のお守りが配られた。極めつきは最後に回ってきた焼き菓子で、わざわざ「KIHA183」の焼き印まで押されている。

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