バンコクの新たな「中央駅」、1年遅れの多難な出発 円借款で整備したが日系企業はほぼ関われず

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バンスー中央駅・タイ国鉄キハ183
バンスー中央駅へのターミナル移転記念式典で、来賓輸送用列車として登板した元JR北海道のキハ183系気動車=2023年1月19日(写真:Adam Faridl al Fath)
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1年半近くにもわたるターミナル駅移転論争にようやく決着がついた。2023年1月19日、タイの首都・バンコクの鉄道ターミナル機能が、長らくその座を維持し続けてきたフアランポーン駅から2021年11月に開業したバンスー中央駅に移転した。同時に駅名も、バンスー中央からクルンテープ・アピワット中央に変更された。

クルンテープとはバンコクの正式名称であり、旧ターミナルのフアランポーン駅も、タイ人の間ではもっぱらクルンテープ駅と呼ばれていた。つまり、この改名でバンスー中央駅が正式なターミナルとしてのお墨付きを得た格好である。1日当たり上下52本の列車が同駅発着となる(以下、本記事中では駅名の表記を「バンスー中央」とする)。

新たな歴史の幕開けだが…

しかし、これはタイの鉄道の新たな歴史の幕開けであるとともに、多くの問題を抱えたままでの出発ともなった。今回のバンスー中央駅を含めた路線改良には日本の円借款が用いられつつも、中国の協力で建設が進む高速鉄道の乗り入れに備えるなど、インフラ輸出における日中の覇権争いの火種にもなりうる。バンスー中央駅の現状と課題、そしてタイ国鉄の将来を展望すると不都合な真実が見えてきた。

ターミナル移転の記念式典に合わせ、1月19日午後1時過ぎ、タイ南部スンガイコーロック行きの快速171列車がバンスー中央駅からの初の長距離列車として出発した。牽引するのは、タイ政府予算でバンスー中央駅開業用に導入された新型機関車、中国中車製のQSY(CDA5B1)型である。

タイ国鉄・バンスー中央駅発の長距離一番列車
長距離列車としてバンスー中央駅発の1番列車となった快速171列車スンガイコーロック行き。客車の一部は戦後導入された日本製非冷房車=2023年1月19日(写真:Adam Faridl al Fath)

また、後続の来賓専用列車として元JR北海道のキハ183も登板し、セレモニーに花を添えた。これまで殺伐としていた巨大な駅構内には、長距離利用者向けの軽食販売ブースなどが設けられ、危惧されていた食料調達面での問題は解消した模様だ。

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