前代未聞、スイス「100両編成電車」実現の舞台裏 全長なんと約2km、「史上最長の旅客列車」運転
2022年の欧州鉄道界はさまざまな出来事があったが、中でも人々の度肝を抜いたイベントは「世界最長旅客列車の新記録挑戦」だっただろう。
ギネス世界記録の認定をも目指したこのイベントは10月29日、スイス東部の山岳鉄道・レーティッシュ鉄道(RhB)が実施した。同社が保有するシュタドラー(スイス)製の電車「カプリコーン」4両編成25組を連結し、100両編成で山を下るという試みで、先頭から最後尾までの長さは1910m、つまり約2kmに及ぶ奇想天外な挑戦だった。それまでの最長旅客列車記録だったベルギーの70両編成、全長1773mを上回り、世界最長の旅客列車記録となった。
「氷河急行」で有名な鉄道
RhBは、スイス東部のグラウビュンデン州を中心に約400kmのネットワークを持つスイス最大級の私鉄だ。沿線には世界的な山岳リゾート地のサンモリッツや、「世界経済フォーラム」(通称ダボス会議)で知られるダボスなどを擁する。「氷河急行」や「ベルニナ急行」といった観光列車の運行で有名で、コロナ禍前には数多くの日本人観光客がこれらの列車を利用していた。また、箱根登山鉄道と姉妹提携しており、すでに40年余りの歴史がある。
観光路線の色彩が強い一方、グラウビュンデン州の鉄道輸送をほぼ一手に引き受けており、旅客・貨物列車の両方を運行、州の経済を支える輸送手段として重要な役割を担っている。
イベントはスイスの鉄道175周年を記念して実施され、RhBは「スイス鉄道の技術的な進歩と、近代的な車両について焦点を当てた」とその意義を説明する。ただ、現地に赴いた記者らに対しては、RhBがなんの記録を樹立するためにこのイベント列車が運行されるのか、発車前には明らかにされていなかった。
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