前代未聞、スイス「100両編成電車」実現の舞台裏 全長なんと約2km、「史上最長の旅客列車」運転

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今回の記録挑戦に当たり、RhBはなんと主要区間であるクール―サンモリッツ間を当日の始発からイベント終了まで運休するという決断を下した。車両を集めて、それをつないで、といった作業を行うのに運休は不可避なのか?という意見もあったとされるが、ともあれこのイベントは実行に至った。

100両編成が走ったルートのうち、走行状況のライブ中継を実施したり、メディア関係者を乗せて走ったのは、前述の主要区間のうちのプレダ(Preda)―ベルギュン(Bergün)間の12.6km。途中、4つのループ線区間と9つのトンネルがある。トライアル起点から終点までの平均勾配は33パーミル(1000m進むと高度が33m変わる)の下り勾配で、標高差は417mだった。

この編成は関係者や報道陣を降ろしたのち、ユネスコの世界遺産に登録されているランドヴァッサー橋を越え、その先のアルヴァンオイ(Alvaneu)まで走り切った。その結果、100両をつないで走った距離は合計24.9kmに達した。

全長約2kmに及ぶ100両編成電車
全長2kmほどもある編成を動かすのに、運転士7人が乗り込んだという(写真:MAYK WENDT/RhB)

筆者が話を聞いたRhBの営業担当、カミュ・ハルジさんは当日の運行について、「運転士は7人、技術者は20人以上が乗り込んだ」と説明。新型電車「カプリコーン」は4両編成を4組つないだ16両編成までは単独の列車として走行できるものの、さすがに25組をつないで協調運転ができる仕組みにはなっていない。そこで、100両編成のうちいくつかの編成に運転士と技術者が乗り込み、無線で連絡を取りながら列車の速度を調整するマスター・コントローラーやブレーキを操作しながら走らせる必要があったという。

全区間を「惰力」で走行

トライアルの実施時刻は当日14時プレダ発と設定されていた。ところが、出発時刻になっても列車は微動だにせず、現場では「これはキャンセルか」という戦慄が走った。しかし運行系統の問題ではなく、先頭車両に取り付けられたカメラの不具合であることが判明、結局20分遅れで無事プレダを発車した。

編成のモーターの出力を全て加算すると、5万3620馬力に達するという参考数値も示されていたが、実際には全線を重力による「惰力」で走った。また総重量は2990トンとされていたが、乗客なしでの車両重量はこれより少ない2975トンだった。

RhB 100両編成電車 プレダ駅
プレダの駅に停車する100両編成の電車(写真:PHILIPP SCHMIDLI/RhB)

最高速度はあらかじめ時速35kmまでと内規を設けていた。しかし実際には始点から終点までの12.6kmを31分58秒で走り、平均時速は25.3kmだった。

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