バンコクの新たな「中央駅」、1年遅れの多難な出発 円借款で整備したが日系企業はほぼ関われず

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それでも東南アジア最大の鉄道ターミナルとしての呼び声高いバンスー中央駅だが、その機能は、1月19日時点でもまだ5割しか使われていない。現在使われているのは在来線用となる下層(2階)のホームのみで、開放的な天井を持つ上層(3階)の高速鉄道用ホームは高速鉄道自体が開通していないため、準備工事がなされているだけである。

バンスー中央駅から延びるタイ高速鉄道の路盤
バンスー中央駅から延びる高速鉄道の路盤は、チャトゥチャック駅手前で途切れている(筆者撮影)

計画通りに進めば、ここにはノンカイ―バンコクルート(中国が協力)、ドンムアン・スワンナプーム・ウタパオの首都圏3空港連絡ルート(南側は既存のエアポートレールリンクの設備を流用・延伸、北側はノンカイルートに直通、PPP方式)、それにチェンマイ―バンコクルート(日本が協力)が乗り入れてくることになる。さらに将来的には南部マレーシア方面へのルートも加わることになり、この上層階にはタイの鉄道の壮大な夢が詰まっている。

高速鉄道の開業時期は見通せず

10年後、20年後を見据えた設計にはただただ脱帽するばかりである。しかし、はたして高速鉄道がいつ開業するかは定かではない。

タイの高速鉄道計画図

すでに着工しているのはノンカイルートで、第1期区間となるナコンラチャシマまでの間では一部区間に高架橋がお目見えしつつある。ただ、その先は未定である。3空港連絡ルートは中華系財閥企業が出資することが決まっているものの未着工だ。そして、チェンマイルートに関しては採算性の問題から事業化すら決定していない。ノンカイルートと異なり、貨物輸送を想定していないことがネックになっているといわれている。はたしてバンスー中央駅が100%の機能を発揮する日が来るのかは、現時点では定かでない。

在来線側の諸問題はどう解決されるだろうか。垂れ流し式トイレによる黄害対策については、旧型車両にも汚物タンクの設置が進んでおり、数年内に垂れ流し式の車両は消える模様だ。

また、機関車の排ガスによる煤煙対策については、2022年に20両が一斉に運用投入された中国中車製のQSY型がさらに追加で30両導入される。同年12月末に10両、今年1月下旬に最後の20両がタイに到着しており、2023年中に全50両が運用投入される予定だ。そうなれば、バンスー中央駅に入る機関車は排ガスを抑えた新型に統一できる。ただ、新型機関車をもってしても、ホーム内に白煙がこもる様子が確認されており、抜本的解決には至らない。

タイ国鉄QSY型機関車
バンスー中央駅発の長距離1番列車、快速171列車を牽引する中国中車製のQSY型機関車。同型機は2023年中に全50両が導入される(写真:Adam Faridl al Fath)
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