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バンコクの新たな「中央駅」、1年遅れの多難な出発 円借款で整備したが日系企業はほぼ関われず

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  • 高木 聡 アジアン鉄道ライター
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しかし、この日の同駅発の長距離列車は、前日に到着した客車をフアランポーン駅から回送する必要もあったと思われ、軒並み1時間以上の遅れでの運行となった。駅に隣接して新たに客車区も設置されたが、同駅に到着した列車を客車区に入れるためにはいったんスイッチバックして数駅戻り、また方向転換して戻すという非常に手間のかかる作業を強いられる。現場が慣れてくるまで、しばらくは混乱が続くかもしれない。

ガラス張りのバンスー中央駅。駅名板はクルンテープ・アピワット駅に改称後もまだ交換されていない(筆者撮影)

2022年1月16日付記事(「バンコクの『玄関駅』、廃止のはずが列車発着の謎」)で紹介している通り、フアランポーン駅からの移転は本来、2021年末に実行される予定だったが、課題山積のために延期されてきた経緯がある。ただ、ターミナル機能は移転したものの、課題の1つであった通勤客対策として近距離普通列車など62本は引き続きフアランポーン駅発着として残っている。そもそも、先述の客車入れ換えの方法からして、すべての列車をバンスー中央駅でさばくのは物理的に不可能なのではないかと思われる。

高架新線に「垂れ流し」旧型車が

バンスー中央駅より北側、ランシット駅までの区間は通勤電車が走る高架の電化新線(北線「ダークレッドライン」)が整備されており、同線は2021年11月29日に開業済みである。今回のキモは、このダークレッドラインにタイ国鉄在来線の列車が乗り入れを始めたという点である。

フアランポーン駅発着で残る普通列車なども、バンスー(在来線)以北はダークレッドライン経由となり、まるでつくばエクスプレスに昭和の旧型客車列車が乗り入れてきたかのような異様な光景が展開されている。そのため、バンスー―ランシット間の各駅は空港最寄りのドンムアンを除いて普通列車は通過となり、これらの通過駅利用者はダークレッドラインの電車(各駅停車)に誘導される。また、従来フアランポーン駅に発着していた長距離列車利用者の利便性確保のためには、高速道路経由でフアランポーン駅とバンスー中央駅を結ぶ路線バスが設定された。

ダークレッドラインの内側(急行)線を走行するバンスー中央行きの快速112列車(写真:Adam Faridl al Fath)

しかし、普通列車の垂れ流し式トイレによる黄害問題、ディーゼル機関車の煤煙問題、在来線列車などの保安装置未設置など、多くの課題が解決しないまま移転当日を迎えている。日本の高品質なインフラ輸出と呼ぶには程遠い状況だ。

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【円借款でも日系企業はほぼ関われず】

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