誰が乗る?タイに渡った元JR北「キハ183」ツアー 参加者はほぼ地元客、まるで「昭和の団体旅行」
この日の行き先はバンコクから距離にして70kmほどの街、チャチュンサオである。一連のキハ183ツアーで、これは鉄道乗車距離がかなり短い部類に入るが、価格は1999バーツ(約7940円)と4月下旬までに設定されたツアーの中では最高額の設定である。昨年12月末に初回のキハ183ツアーが設定されたのもチャチュンサオであり、現時点で、もっとも設定回数の多い行先になっている。とは言え、バンコクから東に走る近郊列車の終着駅として、「海外鉄」にとっては馴染みの地名であっても、多くの外国人観光客にとっては、かなりマイナーな土地であろう。
長距離列車の発着機能の大半がバンスー中央駅に移り、すっかり寂れてしまったフアランポーン駅だが、週末の朝はにわかに賑わいを見せる。これから乗るキハ183ツアーのこの日の発車時刻は7時40分。キハ183は7時前には入線しており、ツアー参加者の受け付けも始まっている。
ホームを挟んだ反対側の線路には、その少し前まで6時30分発のカンチャナブリ・ナムトク/フアヒン行きの臨時快速が止まっていた。タイ国鉄はこれも観光列車と称しているが、実態は全車座席指定の毎週末運転の臨時列車で、時刻表にも掲載されている。一般列車よりは割高ではあるが、現地でのアクティビティは含まれない運賃のみで乗車が可能である。よって、目的地での行動は乗客に任されている。こちらも既にコロナ禍前の賑わいを見せており、若いタイ人観光客のほか、圧倒的に多いのが白人観光客である。
キハ183ツアー参加者は「タイ人中高年」
一方、キハ183ツアーに三々五々集まってくる参加者は、ほぼタイ人である。2~3人日本人の姿もあったが、それ以外に外国人の姿はない。しかも、タイ人の大多数が40代以上と思しき中高年層であり、先の臨時快速の乗客層とのコントラストが非常に興味深い。それもそのはずだろう。このキハ183ツアーは添乗員に率いられ、観光地からお土産屋、食事に至るまでを全ての行程を管理された、いわば「昭和の団体ツアー」である。
中産階級層の拡大により、バンコクなどの都市の若者を中心に国内外問わず旅行ブームが到来しているが、人気を呼んでいるのは有名観光地よりもインスタ映えを狙った古い町並みなど、大衆向け観光ガイドに載らないような場所だ。日本でも、「こんなところに外国人観光客が?」と驚くことがあるが、それがアジア系の人であった場合、タイ人であることが多い。そんな行動力のある若者たちが、「昭和の団体ツアー」に参加するわけはないなと、この光景を見て、妙に納得してしまった。まして、個人旅行主義の欧米人観光客など言わずもがなである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら