政府は、ほんとうに震災被害の現状把握ができているのか?
震災発生以後の状況に関する政府の対応の鈍さが際立ってきている。何よりも目立つのは、現状把握努力の乏しさだ。復興対策の具体化に向けて、大きな不安材料となっている。
震災の直接的な打撃が相対的に軽かった首都圏などで、内閣府による企業へのヒアリングが始まったのはつい最近のことだ。内閣府の政策統括官(局長級)が企業トップへ面会を求めてきている。面会では、(1)現在、経営状況がどのようになってるのか、(2)政府にどのような政策を期待しているのか、について、重点的に聴取している。
ようやく、震災対応の動きが始動したことになるが、企業側の反応は厳しい。たとえば、ある非製造業大手のトップはこう酷評する。
「計画停電が始まったときも、ガソリン不足が深刻化したときも、政府からは何の要請すらなかった。いままで何をやっていたのか」
震災地域では不満はなおさらだ。震災発生から1カ月弱が経過しようとしているが、岩手、宮城、福島では今も、さまざまな方面で厳しい情勢が続いている。それにもかかわらず、中央省庁からは調査団も来なければ、本格的なヒアリングも行われていないのが実情だ。中には、実態把握の乏しさに焦りを覚えた官僚が被災地を訪問したりしているが、これは組織的なものではなく、あくまでも個人的な行動にすぎない。
福島県内のある自治体を訪れると、幹部はこう語った。
「もちろん、自衛官、消防職員、警察官などは大勢、来ていただいている。しかし、震災後、こちらを訪れた中央省庁の人は、総務省の行政監察官だけ。あとは、どの官庁からも人は来ていない」