四半世紀で韓国は2.7倍「日本はマイナス」の悲劇 給料で「日本一人負け」になった根本的な原因

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そして、大半のお金は預金口座に預けっぱなしになり、みんなが一気に口座からお金を引き出すことは基本的にありません。したがって、銀行は実際に保有しているお金よりも、たくさんのお金を貸すことができます。

しかし、何かのきっかけで銀行が信頼を失い、「預けているお金が引き出せなくなるかもしれない」と思われて、引き出しが殺到するとおしまいです。預金残高全部に対応するお金を本当は保有していないからです。みんなが「預けたお金はいつでもちゃんと引き出せる」と信じているからこの仕組みは成り立ちます。「信用」が全てを支えているのです。

バブルは「貸し過ぎ」の状態であり、預金残高が膨れ上がります。そのお金が株や不動産に流れて異常な値上がりを起こしました。「値段が上がり続ける」という前提さえあれば、いざとなったら株や不動産を売って借金返済に充てられますから、銀行も簡単にお金を貸すようになります。

経済低迷の発端は金利を下げ過ぎたこと

しかし、値段が暴落すると、その前提が成立せず、貸したお金が返ってこなくなります。貸した0金が返ってこない状態になった銀行は信用を失います。そうすると、お金を次々と引き出されてしまい、やがてそれに応じることができない状況に追い込まれ、破綻します。

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バブル崩壊後から数年を経た1999年11月から、大手の金融機関が次々と破綻していきましたが、簡単に言うと貸し過ぎたお金が返ってこないため、信用を失ったことが原因です。そこから日本経済は長い停滞期に入っていきました。

こうして考えると、日本の経済の低迷の発端は、金利を下げ過ぎたことです。こうやって金利を引き下げてお金の量を増やすことを金融緩和と言います。これによって、日本はバブル期にものすごく痛い目にあいましたが、「アベノミクス」において、異次元の金融緩和を行い、また同じことを繰り返してしまったのです。

明石 順平 弁護士

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あかし じゅんぺい / Junpei Akashi

1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。著書に『アベノミクスによろしく』『データが語る日本財政の未来』など。ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人。

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