四半世紀で韓国は2.7倍「日本はマイナス」の悲劇 給料で「日本一人負け」になった根本的な原因

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名目賃金と同様、日本はまた断トツ最下位になってしまいました。次に伸びていないイタリアでも69.8%の伸び率なのに、1.2%しか伸びていません。文字通り、日本だけが桁違いに伸びていないのです。次に、実質GDPの伸び率を見てみます。

そして、より実質的な伸び率は(実質GDP伸び率:1996-2021年)

一番伸びていないのがイタリア(10.5%)、次がプエルトリコ(13.2%)、その次が日本(13.6%)なので、名目よりはマシといえるものの、やはりかなり厳しい値なのがわかると思います。このように、名目・実質ともに、賃金とGDPとのあいだに強い相関性があることがわかると思います。賃金が低迷していることはつまり、日本の経済が低迷していることを表しているのです。

日本経済低迷の「真犯人」

この日本経済の低迷に大きく影響しているのが、バブル崩壊とその後の金融危機です。バブルというのは、ある資産の価格が異常に上がってしまう現象のことをいいます。1990年前後に起こった日本のバブルでは、株と不動産が異常に値上がりしました。

このとき、日本は金利を下げる政策をとっていました。それは、1985年に先進5カ国で結ばれたプラザ合意によって「アメリカのドルを安くし、それ以外の通貨(円も含む)を高くする」ことが決まったことに関係しています。これで円高になりますから、経済界は円高によって不景気になることを恐れました。そこで、金利(公定歩合)を下げることでお金を借りやすい状況をつくり、この危機を乗り切ろうと考えたのです。

瞬間的に見れば、この政策は成功しました。お金が借りやすくなったことで、借りたお金が株と不動産に流れ、株価も地価も高くなっていきました。しかし、それがバブルと言われるほど急激に高騰すると、極めて危険な状況になります。それは、金融機関が「お金の貸し過ぎ」という状況に陥るからです。お金の貸し過ぎがなぜ危険なのかを説明しましょう。

ひとまずここで、銀行からお金を借りる、ということがどういうことか考えてみたいと思います。たとえばあなたが銀行から1000万円を借りるとき、銀行はあなたに1000万円の札束を直接渡すのではなく、その銀行に開設したあなたの預金口座に1000万円を入金したという記録をつくります。こうして貸せば貸すほど預金残高が増えますので、世の中のお金が増えていきます。端的に言えば、借金によってお金は増えます。これを信用創造といいます。

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