ダイハツ不正で考えたい「安全に関わる人」の問題 ESV国際会議の直後に発覚した不正に思うこと
第27回ESV国際会議では、全体講演や各領域での個別協議のほか、自動車メーカー、自動車部品メーカー、そして各種研究機関などが最新技術を展示した。
その中で印象深かったのが、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)の幹部が、「ピープル・ファースト=人中心」を基本として、交通全体や道路・街のデザインを考える必要性を強調したことだ。
ここでの「人」とは、クルマの運転者、自転車の利用者、歩行者などの交通参加者としての消費者、メーカーなどの技術者や研究者、そして行政に携わる関係者等を意味する。世界の中でももっとも高齢化が進む日本という国に、高齢社会におけるクルマや交通のあり方を議論する場として世界の注目が集まっていることを再認識した。
また技術面では、自動車メーカー各社の関係者と意見交換する中で、クルマ同士(V2V)、クルマとインフラ(V2I)、そしてクルマと歩行者(V2P)という、通信による情報のやり取りを的確に行うための、V2X(クルマとさまざまなもの)プラットフォームの早期実現が必要だとも強く感じた。
こうしたプラットフォームが、予防安全性能をさらに高めていくために必須であることは、自動車産業界に関わる人の共通認識である。だが、この分野に関しては、メーカーまたは国による主導権争いも見え隠れしており、日本国内での技術連携、そして国際基準化にはまだハードルが高い印象があるのも事実だ。
さまざまな最新V2X技術を展示したホンダのエンジニアも、「自社技術としてはかなり高いレベルになっているが、課題は理想的な(V2X)プラットフォームをいつ・誰が・どのように取りまとめるかだ」と指摘する。こうした業界内での意見調整も、また国際基準化についても、協議するのは「人」だ。
「クルマの安全性」は「人の問題」である
第27回ESV国際会議の取材の約3週間後、ダイハツの認証不正が明るみに出た。
ダイハツとトヨタの記者会見にオンラインで参加しながら、衝突安全性能と予防安全性能という技術はあくまでもツールであり、「クルマの安全性」で最も重要なのは、運転する消費者の交通安全に対する意識、国や地域による「人中心の社会」を目指すための協議、そして消費者の信頼を裏切らないクルマづくりに携わる人たちの誠意だということを再認識した。
至極当然な見解だと思うが、「クルマの安全性」は「人の問題」なのである。
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