ダイハツ不正で考えたい「安全に関わる人」の問題 ESV国際会議の直後に発覚した不正に思うこと

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ヨーロッパ、アメリカ、中国などにNCAPがあり、日本では独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が、JNCAP(ジェー・エヌキャップ)と呼ばれる試験を実施している。

JNCAPの衝突安全性能は、100点満点で点数がつけられ、点数によってA~Eまでの5ランクに、また予防安全性能では91点満点で5ランクに振り分けられ、衝突安全性能と予防安全性能の総合得点よって★から★★★★★までの5段階で評価する。

一旦まとめておくと、ダイハツで認証不正があったのは、新車の製造販売をするにあたり、国の機関が定める規定をクリアするための試験。

NCAPやJNCAPによる試験は、実際に販売されている車種の安全性能レベルを消費者に知らせるための試験である点で、大きく異なる。また、自動車メーカーにさらなる技術開発が必要であることを自覚してもらうため、という側面もある。

アメリカが主導した「ESV=実験安全車」

こうした衝突安全性能や予防安全性能は、日頃あまり表に出てこない技術領域であるため、消費者はもとより自動車産業界を定常的に取材する報道陣でも、最新技術の詳細やグローバルでの技術動向を総括的に確認することは難しい。

そうした中で貴重な機会となったのが、日本では20年ぶりの開催となった、第27回ESV国際会議(2023年4月3~6日、於:パシフィコ横浜)だ。

ESVは、「エクスぺリメンタル・セーフティ・ヴィークル=実験安全車)」のことで、1970年2月にアメリカ運輸省が提唱した開発計画だ。日本政府は、同年10月にEVS開発に関してアメリカ政府と覚書をかわしている。

1972年の東京モーターショーにトヨタが出展した「ESV-II」(写真:トヨタ自動車)

当時の日本は高度経済成長期の真っ只中で、乗用車の普及が一気に進み、排ガスによる大気汚染や交通事故の増加が社会問題となっており、ESV開発は自動車メーカー各社によっても急務であった。これを契機に、車体構造の見直しやエアバッグといった安全装備の導入など、衝突安全性能が進化していく。

一方、2010年代になると、カメラによる画像認識技術や演算能力の高い半導体の量産効果によるコスト削減などがあり、予防安全性能の新しい量産技術が続々と登場した。

最近では、ADAS(アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム=先進運転支援システム)と呼ばれる技術領域のことだ。また、ADASの発展した形として、自動運転の技術革新も進んでいる。

進化する安全性能を評価するため、世界の国や地域で自動車アセスメントの内容が拡充されてきたといえるだろう。

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