「円高はやってこない」FRBが利上げをやめても 下がり続ける購買力、もはや逃避先でもない

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既報の通り、貿易赤字は2022年通年で約マイナス20兆円を記録、2023年に入ってからは年初3カ月間では約マイナス5兆円を記録している。それでも多くの市場参加者は経験則を重視しながら「米金利が相対的に下がってくれば円高になる」という説を支持してきたし、今もその考えを抱く向きは多い。

しかし、少なくとも今のところそうなっていない。

もはや米金利低下だけで円高を期待する(円安を止める)のは難しいというのが筆者の認識だが、FRBが利下げに転換すれば、これほどの貿易赤字を抱えていても、やはり円高が始まるのだろうか。

歴史的にも「巨大な貿易赤字の下での米金利低下」は円相場が直面したことのない状況であり、経験則に頼り過ぎるのは危ういように思う。

ちなみに実質の世界では、年初から途切れなく円安が続いている。内外物価格差を加味した実質実効為替相場(REER)ベースで円を見た場合、3月は75.15と年初来安値である(1月は77.26、2月は75.28)。

名目実効為替相場(NEER)ベースでは1月が83.95、2月が82.84、3月が82.86と2月から3月で横ばいであるかのように見えるが、実質実効為替相場では続落している。

円の購買力は浮揚の兆しがない

日本社会に暮らす市井の人々にとって為替といえば、名目ベースのドル円相場が真っ先に思い浮かぶところだが、国際社会に暮らす日本という国にとって、それは物価格差を勘案した実質為替レートである。

島国だからこそ海外からさまざまな資源を購入し、国内の経済活動に充てていかねばならない。資源はできれば安価で購入できることが望ましい。

しかし、海外から購入する財には当然、相手国の賃金・物価水準が反映される。極端な話、名目の世界で「1ドル=100円」という固定相場が続いても、アメリカの物価が上がり、日本の物価が横ばいという状況が続けば100円で買えるアメリカの財は少なくなる。

理論的にはそうした物価格差を埋めるために円高・ドル安が進むはずであり、それを購買力平価と呼ぶのだが、その話は今回控えるとする。いずれにせよ一国の購買力は名目為替レートからでは測れず、実質為替レートから測るのが正しい。

円の実質実効為替相場の長期推移

重要なことは、ドル円相場は年初、いったん127円台まで円高になり、4月には137円台で推移するなど相応に乱高下しているように見えるかもしれないが、「円の購買力である実質為替レートは下がり続けている」という事実である。円の購買力は浮揚の兆しがない。

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