M&Aが「経営破綻の末の売却」とは言い切れない訳 成長戦略の手段の1つとして選択するケースも

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ただ、中小企業の場合、自社の将来に対する課題意識はあっても、M&Aという選択肢を考えていない経営者が多い傾向にあります。やはりM&Aは巨額の資金を持つ大企業がするものだというイメージがあるのでしょう。

なかには、そもそも成長意欲がないと言わざるを得ない企業もあります。ぼんやりと「現状維持でいい」と考えている経営者は、意外と多い印象です。

しかし、これからの時代において「現状維持」は「後退」を意味します。人口が減り続けるなかで、優秀な人材の確保はより一層難しくなります。中小企業ほど、さらなる業務効率化や生産効率の向上が求められます。

こうした意識の背景には、中小企業という閉じられた環境の中にいることで、経営環境が激変する状況に目が向けられていないことがあると思います。あるいは、「自分が育ててきた会社だ」というプライドが邪魔をして、視野を狭くしているのかもしれません。

もちろん、自社の将来をどう考えるかは自由です。しっかりと売上や利益が上がっていて、「ずっとこの会社をやっていくんだ、生涯現役なんだ」というのであれば、それも自社への愛着として共感できます。その結果、廃業することになったとしても、従業員の就職先を見つけ、職を保証できれば問題ないと言えるのかもしれません。

ただ、やはりすべての企業は成長を目指すべきだと私たちは思います。M&Aのプロセスでは、実際に契約するかしないかは、相手や条件を見てから決めることができます。とりあえず検討してみて、自社に合わないと思えばやめればいい。厳しい言い方になってしまいますが、成長のための選択肢を検討しないことは、経営者としての怠慢ではないでしょうか。

日本社会の生産性を高めるために

日本は少子高齢化が進み、労働人口も減っています。企業の生産性も上がらず、特に中小企業ではずっと同じ給料で働く人も多いのが現状です。飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していた高度経済成長期を経て、日本は「失われた30年」などと揶揄される経済の停滞期に突入しています。

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日本企業の大部分を占める中小企業の生産性が改善されなければ、当然、日本全体の生産性も高まりません。このままでは「元気な日本」はいつまでたってもやってこないでしょう。

私たちが多くの企業の現場を見ているなかで、その危機感を覚えることもあります。最も多いのは、やはり経営者の高齢化です。一般的には、どうしても高齢になるほど気力や体力は続かなくなり、判断力は落ちていきます。結果的に売上は横ばいになり、組織もマンネリ化してくる。そういう企業では、従業員のモチベーションは下がり、優秀な人材から流出していきます。

あるいは、デジタル化の遅れです。いまだに経理担当者が手作業で給与計算をしている会社も多く、「新しいやり方を取り入れて、ほかに労力を割いたほうがいいのでは」と感じます。

そうした課題を解決するための有効な手段が、M&Aによって成長産業を集約していくことです。成長できる余地があるならば、思い切って自社を第三者に任せるという決断は、やはり必要です。

栗原 弘行 NEWOLD CAPITAL代表取締役CEO

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くりはら ひろゆき / Hiroyuki Kurihara

慶應義塾大学卒業後、大手証券会社を経て、2008年より株式会社日本M&Aセンターに入社。多くのM&Aを成約へ導き、上席執行役員として、最大規模の事業部を牽引する。上場会社から中堅・中小企業やベンチャー、ファンドまで多種多様な企業に対し、あらゆるM&Aディールを創出。「企業と人の成長」を実現すべく、2022年6月にNEWOLD CAPITALを創業。

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塚田 壮一朗 NEWOLD CAPITAL取締役COO

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つかだ そういちろう / Soichiro Tsukada

東洋大学卒業後、税理士法人成迫会計事務所、株式会社ジェイエイシーリクルートメントを経て、2016年より株式会社日本M&Aセンターに入社。2020年より日本M&Aセンターグループの株式会社サーチファンド・ジャパン取締役に就任し、同グループの最年少役員として新規ファンド事業をリード。2022年6月共同創業者としてNEWOLD CAPITAL取締役COOに就任。

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