中国からベトナムへ、絶景の「昆河線」数奇な過去 フランスが建設、21世紀初頭まで国際列車も

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「危ない」という理由で一度は終わってしまった昆河線の旅客列車。昆明―河口間は標準軌の高規格鉄道「昆玉河線」が2014年12月に開通したこともあり、全線を走る列車の復活は望み薄だ。

だが、一部の区間では近距離通勤・通学者の足として旅客列車が走っている。2008年には昆明北駅を中心とする昆明近郊の37km区間で旅客列車運行が再開された。

さらに特筆すべき動きは、2018年に途中の開遠市内の線路を改装、同市内に5つの駅を新設して通勤・通学用路線として再興したことだろう。ディーゼル機関車が牽引する客車列車が開遠駅―大塔駅間(全長11.6km)を1日数往復運行しているという。中国の鉄道は全国的に見て、数kmごとに駅を置くこうした「通勤近距離輸送」をほぼ全く手がけてこなかっただけに、こうした取り組みは新鮮な印象を受ける。

また、開遠駅近くにある化学肥料工場で使う原料がハイフォン港に荷揚げされるため、国際貨物列車の行き来も2017年から始まっている。

「歴史遺産」として見直しの機運

昆河線とその支線が通った沿線の街には、フランス人が20世紀初頭に造った鉄道関連の建築や施設が残っている。ひと頃は朽ちるに任せていた時代もあったが、人々が豊かになるにつれ、こうした近代の歴史遺産を見直そうという動きが起こり、博物館や公園、レストランなどに美しく改装された例もある。中越国境に接する河口でも、現存する線路を使った短距離の観光列車を走らせる検討が続いているという。

中国は世界的にみても鉄道王国の一つといっていいだろう。そんな中、同国の鉄道界が手に入れたい称号は「世界遺産」だという。ベトナムと共に滇越鉄道を遺産申請しようとする動きがあったというが、今後どんな展開があるのだろうか。

とかく古いものを次々と新しくすることを是としてきた中国で、積極的に歴史遺産として残そうという意欲が感じられる昆河線。たとえ短区間でもいいので、メーターゲージの鉄道の魅力を今後も伝えていってもらいたいものだ。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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