中国からベトナムへ、絶景の「昆河線」数奇な過去 フランスが建設、21世紀初頭まで国際列車も
外国人による出入国は許可されていたものの、昆明から河口への列車のチケットは「駅で並んで買うしかない」というような前時代的なもの。しかも国境通過の前後に何が起こるかわからない不安から、中国側、ベトナム側双方で手厚い現地旅行会社スタッフによるサポートを受ける(その分、旅のコストもずいぶんかかる)旅をしたものだった。
昆明拠点の旅行会社に「軟卧車(1等個室寝台)をとっておいてほしい」と依頼したところ、出てきた切符を見て驚いた。「ベトナム行き国際列車に連結されている軟臥車に乗って河口まで行け」というのだ。チケット券面は漢字とロシア文字、そしてドイツ語を併記、運賃はスイスフラン建て、というシロモノ。冷戦時代のソ連・東欧圏の旅を思い起こさせるが、それもそのはず、「北京からモスクワ行きの直通列車で使われる切符と同様の仕様」ということだった。
ベトナム側寝台車の乗り心地は?
ベトナムから乗り入れてくる軟臥車の個室定員は4人。標準軌の軟臥車個室に比べると、室内は荷物を置くスペースの分くらい狭いが、糊のきいたリネン類がきちんと用意され、清潔さを心がける列車員たちに好感が持てた。
ただ、欠点は投石避けの鉄板が窓に取り付けられていて外がよく見えないこと、そして線路の路盤が平坦でないため列車が揺れ、そのたびに客車の連結部同士が当たってとても騒がしいこと。また、国際車両はほぼ外国人専用とされていたことから、ベトナム側のスタッフが気を利かせて中国側一般車両との間を施錠してしまうため、空席の多い硬座車に移ってしばし外を眺めるといったこともできない辛さがあった。
唯一、他の車両への「外出」を許されたのは、昆明―河口間のみを走る国内用編成に連結されている食堂車へ行けた時だった。車内でしっかりと調理された数品の本格中華料理を味わいながら、峻険な南渓河の風景を眺めたひと時は格別だったことを思い出す。
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