大谷翔平はついに「歴史的な存在」になりつつある ベーブ・ルースと同様の「野球の変革者」なるか

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2021年、大谷が投打でフル出場して以降、アメリカン・リーグのMVPは「大谷翔平か、他の誰か」ということになりつつある。

2021年はR、Fともに圧倒的な大差で、MVP投票でも大谷が選ばれた。
2022年、大谷はMLB史上で初めて投手として規定投球回数、打者として規定打席をクリア。WARの数値はR、Fともに前年を上回ったが、ヤンキースのアーロン・ジャッジが薬物事件以来最高の62本塁打を打つ歴史的な活躍で大谷を上回り、MVPを獲得。そして2023年は現時点で大谷は2位につけている。

Fangraphs社はWARの投打の内訳を公表している。2022年でいえば大谷は投手として5.6、打者として3.8を獲得、合わせ技で9.5となっている。他の選手で「投打合わせ技でWARを獲得する選手」など皆無だ。

「それくらいすごい活躍をしているんだから、いいじゃないか」という声もあるだろうが、こうしたアワードは毎年顔ぶれが変わるから興趣がある。大谷の「指定席」がずっとあることに違和感を抱く記者も出てきているのだ。

MLB公式サイトでは、昨年までの大谷翔平は「何人かいるスター選手の一人」で、エンゼルスのマイク・トラウト、ヤンキースのアーロン・ジャッジらとともにトップ画面を飾っていた。

しかし今年は、シーズン前のWBCが予想以上にアメリカでも注目され、その中でMVPを獲得したこともあり、大谷翔平は人気の上でも並みいるスターを引き離しトップスターになった感がある。

端的に言えば、大谷翔平は過去に誰もやったことのないことをやり続けていることで「歴史的な存在」になりつつあるのだ。

ルースと同様の「野球の変革者」

100年前のMLBでは「さく越えのホームラン」は、「例外的なリザルト」だった。強打者とはフィールド内に鋭い打球を打って、俊足で二塁、三塁を陥れるような選手のことだった。

しかしベーブ・ルースは、さく越えの大飛球を次々と連発し、野球を「足とスピードの競技」から「どれだけ遠くへ飛ばすかの競技」に変えた。

ルースの偉大さは一時的に「二刀流」だったことではなく、本塁打の魅力を「発見」したことにある。

大谷翔平が発見した二刀流という新たな道に追随者が出れば、大谷翔平はルースと同様「野球の変革者」になるだろう。そうでなければ、彼一人が二刀流という状態が今後も続くなら「野球史上の奇跡」とでもいうことになるかもしれない。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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