「貧困大国」アメリカは、衰退していくのか

人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【前編】

中原:先進国も新興国も例外なく、消費の中核は中間層が担っています。中間層や貧困層は、働いて得た所得のほとんどを使ってしまいます。さらに足りない分は、借金をしてでも使います。経済学的に言えば、消費性向が高く、貯蓄性向が低いのです。

ところがそうした層では昨今、実質賃金の水準が低下し続けており、多くの家計でこれまでと同じ支出を維持できなくなっています。

その一方で、富裕層は稼いだお金をすべて消費せず、その残りの額を再投資に回しています。年収10億円の人がいたとしても、生活に必要なお金はその半分もあれば十分なので、残りは再び投資に回ることになります。下位9割の層が所得の1~2%程度しか貯蓄しないのに対して、上位1%の層は40 %~50%を使わずに再投資するという試算もあります。それだけ消費性向が低いのです。

アメリカのGDPの7割は家計による消費です。消費性向が低い人に所得が集中すると、供給に対して需要が足りなくなり、経済は成長できなくなってしまいます。大幅なデフレギャップが存在する中でさらなる富の集中が起これば、それだけ消費に回るお金は減り、経済の停滞は長引き、国家としての繁栄が止まってしまうのです。

古代ギリシャやローマも同じ形で滅亡した

三井:ご本のなかで古代のギリシャやローマの話が出てきましたが、とても面白く読むことができました。そのエッセンスだけでも説明していただけますか?

中原:今のアメリカでは、かつては分厚かった中間層が脱落して貧困層、あるいは貧困層予備軍に加わり、富が一部の支配者階級に集中する傾向が強まっています。このことは、国家としてのアメリカの歴史的危機と言えます。歴史を振り返ると、かつて軍事・経済・文化で隆盛を誇った国々の多くが、中間層の没落をきっかけとして衰微し、滅んでいったからです。

都市国家として栄えた古代ギリシャでは、当時の中間層であった中小農民が没落したことで、哲学や美術を高度に発達させたポリス社会が崩壊しています。

ヨーロッパ、アジア、アフリカにまたがる大帝国を築いたローマでも、その拡大の基盤となったのはイタリア半島の素朴で頑健な中小農民でした。しかし、中間層が没落したローマは内乱の時代を迎え、その後、国の防衛を傭兵に頼るに至って、ついに滅亡への道を辿っていったのです。

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