「貧困大国」アメリカは、衰退していくのか 人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【前編】

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三井:アメリカにおける格差拡大の主な要因は二つあるとおっしゃいましたが、もうひとつの要因とは何なのでしょうか?

株主資本主義の横行で、貧しくなった労働者たち

中原:もう一つは「株主資本主義」です。アメリカの企業経営者はみな、「利益率(1株当たり利益)を上げなければならない」という株主からのプレッシャーにさらされています。成果を上げれば巨額の報酬が与えられ、成果が出せなければすぐに自分が解雇されてしまうからです。

しかし、株主がこのような利益率でのみ経営を評価してきた結果が、経営者たちが大量の首切りをしてでも利益を稼ごうとする短期主義経営に傾きがちになる原因となっています。

アメリカではインフレ目標政策に加え、株主資本主義が横行し、普通に働き暮らしている労働者が強引なリストラで職を奪われたり、過酷な賃下げを強制されるケースが相次ぎ、働く人々はどんどん貧しくなっているのです。

その一方で、金融緩和によるカネ余りが生んだ資産インフレで、株価と地価は順調に上昇し、資産の大半を株式や不動産で保有する富裕層に属する人たちは、苦労して働くこともないまま資産を膨らませてきています。

皮肉なことに、アメリカで高額所得にランクインする経営者ほど、大量に首切りを行った実績を評価されて所得を増やしているのです。全米の役員報酬額で2013年、2014年とトップになったゴールドマン・サックスのブランクファインCEOなどは、その典型例と言えるでしょう。

つまり、アメリカにおけるインフレ政策とは、株主資本主義とともに、突き詰めれば庶民から富裕層への所得の移転であるのです。

それは富裕層の財産を必要以上に膨らませ、庶民に見えないインフレという税金を課す、搾取のシステムの上に成り立っています。このような富裕層による富裕層のための経済システムを通じて、アメリカでは富裕層と庶民との格差が絶望的なまでに広がってしまったわけです。

三井:インフレを起こすこと、そして企業の利益率を高めること、このどちらもが今の日本の経済政策の中心になっているので、何だか日本の行く末が心配になってきますね。

それをお伺いする前に、中原さんは「中間層が没落すると、国家は衰退する」と主張されていますが、これはどういうことなのか教えてください。

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