「貧困大国」アメリカは、衰退していくのか 人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【前編】

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中原:アメリカは日本とは違い、ずっとインフレが続いてきたので、名目所得の上昇分のほとんどが物価上昇によって消えてしまうわけです。所得下位の階層では、いくら景気がよくなっても実質的な賃金がほとんど上がらないという状態が何十年も続いています。

三井:そもそもアメリカは右肩上がりの経済成長を続けてきたのに、どうしてこんなにも格差が拡大してしまったのでしょうか?

インフレで、庶民の実質賃金が減少する一方

中原:その原因はたくさんあるのですが、私は主たる要因は二つあると考えています。まずその一つめが「(悪性の)インフレ」です。

中原圭介(なかはら けいすけ)●アセットベストパートナーズ代表。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など幅広い視点から経済や消費の動向を分析。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、熱烈なファンも多い。著書多数。

アメリカではとりわけ2000年代に入ってから格差は大きく広がっていくのですが、それは、大多数を占める庶民と呼ばれる人々の「実質賃金」が一貫して下がり続けてきたからなのです。

この間、日本ではデフレで生活に必要なコストが下がっていたのに対し、アメリカではつねにインフレであり、生活に必要なガソリン代、電気代、食費、学費等が大きく値上がりしてきました。

消費者物価は2000年を100として計算すると、2013年は135.3にもなり、13年間で35%以上も上がってしまったのです。

その一方で、平均の名目賃金は2000年を100とした場合、2013年はさすがに上がっているかというと、その逆で97.9と下がってしまっています。

つまり、名目賃金を消費者物価で除して実質賃金を計算すると、2000年を100とした場合の2013年の実質賃金は72.4と、13年間でなんと27.6%も下がってしまっているのです。

三井:日本では考えられないほどの実質賃金の落ち込みですね。庶民の暮らしはその数字以上に苦しいという理解でよろしいのでしょうか?

中原:そのとおりです。2013年時点の国民の名目賃金は1995年の水準にまで下がってしまったのですが、その間にガソリン代が2.5倍、電気代が1.6倍、食料価格が1.5倍に跳ね上がっていたので、これでは暮らしが苦しくなるのは当たり前なのです。

過去10年間足らずでフードスタンプ(国による食料費の補助)の受給者が2倍の5000万人近くに増えたのは、悪性のインフレが弱者へのしわ寄せをもたらした証左とも言えるでしょう。

要するに、庶民の視点から見れば、アメリカのインフレ目標政策は大きな失敗をしていたわけです。

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