コメ消費減っているのに「パックご飯」売れるなぜ 非常食から日常食に移り変わっている

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1995年の阪神・淡路大震災の際、被災地で配られるなどして兵庫県では売り上げが伸びたが、実はそれ以前から被災地域の神戸や芦屋では、高級スーパーなどが積極的に販売していた。富裕層や食にこだわりがありそうな人が、初期の頃の中心顧客層だったと言える。

パックご飯
(写真:サトウ食品提供)

中川氏は「当時は飲料水は水道から、お茶は急須で淹れる時代で、炊いたご飯を買うという発想自体がなかった時代。家庭で炊飯するより割高になってしまうので、炊飯の手間と時間をお金で買える、所得が高い高齢者などのお客様が多かったのです」と説明する。

「10年ぐらい前まで、高齢者の方が多かった印象があります。シニア世代の方々は、ご飯とおかずの食事を求めてこられたのではないでしょうか。今は全世代、男女を問わず購入していただいています」(中川氏)

学生や働き盛りが中心顧客に

この頃のパックご飯の顧客層については、2014年に米穀機構が実施したアンケート調査が参考になる。「加工米飯の動向(No.1 無菌包装米飯)」によると、顧客は40代以上の主婦が7割を占め、最も多いのが50~60代、次がシニア。子どもが巣立った、家族の生活リズムが異なるなど、1度に用意するご飯の量が少ない人たちが利用していたようだ。

ところが、その2年後に全国包装米飯協会が全国の20~60代男女に行ったインターネットアンケート「包装米飯に関する意識調査」では、1週間に1回以上食べる人は単身者が最も多く、3世代家族も26.5%が週に1回以上食べており、2割を切るのは、配偶者などと死別した単身者、夫婦のみ世帯だけになっている。食べる理由は、手軽さやおいしさだ。学生や働き盛りが中心顧客層になっており、日常の昼食や夕食で食べる人が多い、という結果が出ている。

調査が異なることもあるが、わずか2年で利用者層が広がったのは、この頃から共働き世帯が増え、時短ニーズが急激に高まったことがあると考えられる。2016年頃は時短レシピブームが勢いを増し、家事の省力化を求める子育て期の女性の声が雑誌やSNSなどで大きくなった時期である。

多忙な平日、料理は10分、15分で用意できるようになったのに、炊飯だけ1時間以上かかるのでは、食事が遅くなってしまう。切実な事情と、利用を進める声が大きくなったことから、加工食品や市販の総菜への罪悪感が薄れ、パックご飯を選ぶことに抵抗を感じにくくなったのではないだろうか。

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