コメ消費減っているのに「パックご飯」売れるなぜ 非常食から日常食に移り変わっている

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2013年に生まれたミールキット市場も、この頃から拡大が加速している。ミールキットもパックご飯も、一から作るより割高だが、共働き世帯は収入も比較的多く、また多忙過ぎる生活の中で、時間をお金で買う必要性が高い。

加工米飯には、冷凍やレトルトもあるが、サトウ食品がこだわっているのは、炊きたてご飯に遜色ない味を提供したい、という点だという。

中川氏は「カビ発生の原因となる“菌”を遮断できれば、ご飯は日持ちします。当社には、すでに切り餅製造で工場の無菌化技術があったので、無菌包装米飯にもその技術を応用できたのです」と説明する。同社の工場に入るには、ホコリとチリを寄せ付けない防護服を着用し、エアシャワーを浴びるなどして入室までに3度殺菌消毒をする。

工場内では、ベルトコンベア式に60メートルの距離を40分かけてご飯を移動させつつ、ガスを燃料にして個釜で炊飯する。「当社では、家庭のご飯と炊き方と変わらないおいしさを追求し、炊飯方法は家庭と同じです。しかし、非常にコストがかかるため、この製法は、当社だけですね」と中川氏は言う。

1990年には、全自動化した製造ラインでコストを下げ、1994年に酸素を吸収する容器を独自開発し、脱酸素剤を不要とした。だから、同社のパックご飯は無添加だ。そのほかは、火加減や水の量など微調整を蓄積し、炊飯技術を高めて現在に至る。

パックご飯には国も期待?

パックご飯の可能性については、農政調査委員会のレポート「理事長の部屋:米産業のイノベーションによる需要創造―加工米飯、米粉」を読むと、国の期待も大きいようだ。何しろ、コメの消費量は60年間減り続けている。無洗米がコメの選択肢の1つとして定着したように、パックご飯も主食の選択肢として定着し始めているのかもしれない。

日本の食事は、ご飯を中心に組み立てられてきた。私たちが慣れ親しんできたおかずは、コメが主食であることを前提に作られ、外国から来た料理もご飯に合うことを前提に日本化されてきた。

しかし、パスタなどの麺類、パンなどの小麦食品が主食になる、あるいは主食を抜きにした食事が主流になれば、おそらく食文化も大きく変わる。そこへ人気が上昇してきたパックご飯は、それでもなおコメのご飯を中心にした食事が求められていることを示すと同時に、そうした和食文化が生き延びる助けになるかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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