津波が襲った福島県南相馬市。兼業農家の人的被害も多く、農業技術継承にも暗雲漂う

津波が襲った福島県南相馬市。兼業農家の人的被害も多く、農業技術継承にも暗雲漂う

甚大な津波被害を受けた福島県南相馬市。沿岸部の地域は海岸線から1キロメートル以上にわたって壊滅状態に近い。場所によっては、海岸線から2キロメートルほど離れていても、いまだに海水がたまったまま、あたかも湖のような光景を呈している。

1キロメートルも離れた田畑に数多く転がっていたのは、なんと、防波堤代わりに海に配置されていたテトラポットだった。津波は巨大なコンクリート塊をここまで持ち込んでいた。

海岸線からなだらかな上り坂が続いた一画に、原町区萱浜北才ノ上地域がある。目算では海岸線から1キロメートル程度の距離だ。農道が交差する片隅に、新たに設置された「伝言板」がある。伝言板の下には、花がたむけられ、線香の煙が立っていた。伝言板には安否確認表が張られ、幸いにも消息が確認された人たちには「生存」という言葉が記されている。

4月5日昼過ぎ、そこからさらに数百メートル内陸に住む主婦がその伝言板に見入っていた。

「ここらは、どの家でも1人は不明者がいるから」

彼女は悲痛な面持ちで、地震発生の瞬間を話し出した。

「子供が2階から突然、叫んだ。『遠くからゴーゴーという音がしている』と。それで、私も2階に上がって外を見ると、たくさんの鳥が一斉に飛び逃げていた。海を見たら、茶色の大きな壁がどんどんもこっちに迫ってくるところだった。あっという間、私の家まで津波が来た。家族で屋根まで上がって避難していたら、救助された」

彼女の家は幸運にも全員が助かった。「それだけでもよかったと考えないといけない」。この日、政府は大規模な不明者捜索を実施した。彼女の自宅は傾いたものの、このあたりでは数少ない立脚家屋だったが、家屋の下に不明者がいる可能性があるため、家を解体してもらった。

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