ネガティブ思考は性格ではなく、「脳疲労」だった 精神科医とうつ経験者が語る「ラクな生き方」
デラさん:口内炎ができたとき、「嫌だな」「なんでできちゃったんだろう」といつまでも考えていると痛みが永遠に続く気がしますよね。逆に「しょうがない」と思うようにすれば、いつの間にかなくなっている。僕は「口内炎理論」と呼んでいるんですが。
樺沢:「嫌だな」と考えれば考えるほど、脳の注意がそこに集中するので、余計に嫌な気持ちになるんですよね。そんなときは趣味や楽しいことに没入して、気を紛らわせるのがベストです。
デラさん:僕は最近ポケモンカードにハマっていて、この前も大会で優勝しました(笑)。嫌なことがあってもいい気分転換になっています。あとは、ゲームで気持ちをリセットしたり、コンビニで残り1個の鍋焼きうどんを見つけて「よっしゃ」って喜んだり。どうせオマケの人生だと思ったら、小さなことでも幸せを感じられるお得な体質に変わりました。
樺沢:デラさんのように、一度どん底に落ちる「底つき体験」をすると、恥も外聞もなくなって無理するのをやめられるようになることが多いです。落ちるところまで落ちたらもう上がっていくしかないので、なにをしても楽しいし幸せ。だから、いま「人生最悪」だと思っている人は、人生がプラスに向くチャンスともいえます。
病みやすい人は「べき思考」が強い
樺沢:いまはポジティブ思考を実践できているようですが、うつ病になる前はそうじゃなかったのでは?
デラさん:はい。ネガティブセンサーばかり働くタイプでした。上司からちょっと注意を受けると「なんでこの人はこういう言い方をしてくるんだ」「なんで俺ばっかり」とずっと引きずって、寝る前にも思い出して全然寝つけなかったり。
樺沢:「ネガティブな性格を変えたい」という相談をよくもらいますが、ネガティブ思考というのは性格ではなく状態。脳が疲れてくると、扁桃体という部分が興奮状態になり、危険を察知しようとして「これはヤバイ」「もうダメだ」といったネガティブな思考回路が猛烈に加速します。つまり、ネガティブ思考が強い人は、脳疲労の状態である疑いが強い。そうならないためにも普段から休息や睡眠をきちんととることが大切。心を病んでしまう人はたいていリラックス下手です。
デラさん:確かに、会社員時代は睡眠を削って働いていました。うつ病真っ最中のときも1日4時間とかしか眠れなくて。最初は眠れない自分を責めていましたが、「眠れないなら起きていればいいや」と割り切るようにしてからは気がラクになって、いまは7時間まとめて眠れることも増えました。それもネガティブ思考が減った要因かもしれません。