人気漫画【推しの子】が大人に激しく刺さるワケ 500万部突破の裏に、多くの世代に響く設計があった

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1994年に開催された国際人口開発会議で採択された「カイロ行動計画」の成果であり、女性が安全に妊娠・出産でき、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を得られるよう適切な医療を受ける権利を定めている。

SRHRやカイロ会議という言葉を聞いたことがなくても、子どもを持つことは、出産する人の自己決定に基づくものであるべきだ、という考えは多くの人が理解・納得するはずだ。

厚生労働省の調べによれば、2019年度の人工妊娠中絶件数は15万6430件である。2019年の出生数は86万5234件であり、望まない妊娠や事情があって産めない事例が珍しいものでないことがわかる。

漫画の中で10代の妊婦は、子どもを持つことを受け入れ、歓迎していたが、それがあくまでも本人の意思決定であり、周囲の誰からも強いられたものではないことは重要だ。

10代の女性を尊重するような価値観

筆者が映画館にアニメ版第1話を見に行ったところ、観客席のほとんどが10代と思しき女性で埋まっていた。「芸能界」「アイドル」といったキーワードや、多様で魅力的な女性キャラクターが登場することに加え、10代の女性を尊重する価値観が通奏低音のように響くことも、この世代から支持される要因ではないか。アニメ版は原作漫画を忠実に再現している。

これから『【推しの子】』を読もうとする大人には、2回以上、読むことをお勧めしたい。最初はストーリーを純粋に楽しみ、2回目以降は、人物の表情にこめられた意味や伏線に注意しながら読むと、さらに楽しめるはずだ。そして、巧みに作られたエンタメの世界に浸りながら、子ども・若者たちが提起する大人の社会の問題について、少し思いを寄せてほしい。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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