「日本株の先行き」が一段と危うくなってきた 「想定外の株価上振れ」の後はどうなるのか

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このバフェット氏の発言は、3つ目の要因と結び付けられており、そのため日本株の押し上げが進んだ感がある。その3つ目の要因とは、低PBR(株価純資産倍率)企業について、経営改革が行われ、その結果、PBRが押し上がるとの期待だ。

PBRが低いことは、株主から預かった資金(純資産=総資産-負債)に対し、株価が低迷していることを意味する。また、純資産は企業の解散価値を示すので、PBRが1倍を割り込んでいる企業に対して、株式市場が「お前の企業は解散価値ほどの値打ちもない」と告げていることに等しい。

日米で比較すると、日本市場ではPBRが1倍を下回る企業は全体の半数弱に達する。一方、アメリカのS&P500採用企業では1倍割れは15%ほどで、かなり差が大きい。

別の形で述べると、「PBR=ROE(自己資本利益率)×PER(株価収益率)」と分解できる。ROEはその企業の現在の収益性を示す。PERは企業の先行きの収益成長力が高いと見込まれれば高くなる。すなわち、「日本企業のPBRが低い」ということは「日本企業は現在も将来も収益力がない」と市場が判断しているわけだ。

海外で「日本企業の改革期待+バフェット」の連想も?

こうした事態は、もちろんゆゆしき問題だ。東京証券取引所はすでに危機感を抱いており、1月30日に公表された「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」という資料では、ROEやPBRの水準が低い企業に、改善策の立案・開示を求めるとされている。さらに踏み込んで、東証が企業の改善策に期限を設定させ、期限までに改善が実現しない場合は上場廃止などの策を採る、とも見込まれている。

こうした動きを受けて、日本企業がPBR押し上げのため経営改革を行い、低PBR銘柄の株価が大きく上がる、との期待が広がっているようだ。

海外投資家の間でも、そうした改革期待を素直に抱き、「バフェット氏がそうした日本企業の好ましい変化を見据えているのではないか」との連想も膨らんでいるのかもしれない。

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