「日本株の先行き」が一段と危うくなってきた 「想定外の株価上振れ」の後はどうなるのか

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アメリカの景気も企業業績も悪化している中、同国の中央銀行が依然として根強いインフレに対応するために金利を引き上げ続けるという展開は、株価にとって最悪のはずだ。しかし、同国の株価は今のところ異常なほど底堅い。これは素直に「株価が買われすぎである」と判断すべきだろう。

日本株を押し上げた「3つの要因」

こうしたアメリカ株の強調推移から、筆者の「日本株がアメリカなどの株価下落に巻き込まれて下落する」という見通しは「今のところは」実現していない。それどころか、日本株は海外発の悪材料の間隙を縫って上振れ気味だ。

日経平均株価は、終値ベースでは4月18日に2万8658円83銭の年初来高値をつけた。これは昨年8月以来の高水準となる。

日本株が騰勢を強めた背景要因は、主に3つ挙げられる。そして、そのうち2つは関連づけて議論されている。

1つは、4月10日の植田和男・日本銀行総裁の記者会見だ。総裁は注目されている「イールドカーブコントロール」(長短金利操作)の今後について、諸環境を踏まえると「継続が適当」であると述べた。

日本のエコノミストの間では「4月27~28日の金融政策決定会合ではイールドカーブコントロールの変更はないだろう。もし修正するとすれば、もっと先だ」との見解がもともと主流であり、総裁の発言は驚くことではない。

しかし、海外投機筋の間では「すぐにでもイールドカーブコントロールの修正、あるいは撤廃に動くだろう。それは日本の長期金利が上がるということだから、株安・円高に賭ける」と判断した向きもいたようだ。

そのため植田発言を受けて、ドタバタと株の買い戻しや円の売り戻しが行われたと推察される。とすれば、植田発言による株高は短期買い戻しの色合いが濃く、持続性が乏しいと判断できる。

2つ目は、来日していたウォーレン・バフェット氏が、4月11日に日本経済新聞の単独インタビューに答え、日本株への追加投資について前向きな姿勢を語ったことだ。

確かにバフェット氏は高名な投資家で、その投資手法などを称賛する向きが多いことから、「バフェット氏が日本株をもっと買おうというのなら、何か自分が見落としている日本株の買い要因があるのかもしれない」と、自身の投資戦略を再検討する向きがいてもおかしくはない。

しかし、バフェット氏といえども一投資家にすぎず、その言動ばかりで日本株全般が大きく動くのはやりすぎ感が強い。

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