みずほの「Jコイン」、誕生4年で打ち出す挽回策 個人利用で苦戦の中、法人・自治体需要に活路

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J-Coin Payの発表会見の様子
2019年3月にサービスを開始したJコイン。全国の金融機関を巻き込んでオールジャパンの決済サービスを目指すとしていた(写真:梅谷秀司)

銀行の”安心・安全”と”利便性”を提供し、キャッシュレス社会を実現するーー。そんな大きな野望とともにサービスを開始したみずほ銀行の「J-Coin Pay」(以下、Jコイン)が、転換点を迎えている。

スマホ決済サービスはいまだ乱戦模様だ。ペイペイや楽天など、IT系の企業が展開するサービスが広告やポイント還元で攻勢をかける中、Jコインは後塵を拝している。サービス開始は2019年3月とスマホ決済の中では後発組。ユーザー数はようやく100万人が見えてきたが、数千万ユーザーを誇る同業の背中はなお遠い。

そこでみずほは決済システムの外販や自治体からの事務受託など、新たな分野に活路を見いだしている。

Jコインのシステムを流用

2022年9月、ヤマトホールディングスが開始した独自のスマホ決済「にゃんPay」。宅急便の運賃や包装資材料金を決済できるサービスだが、基盤となっているのはJコインのシステムだ。「Jコインの仕組みを使って、法人間決済を担えないかと考えたのがきっかけだ」。みずほ銀行デジタルイノベーション部の岡村健太氏はこう話す。

みずほは2022年6月、企業の自社店舗や特定の地域でのみ流通する独自通貨「ハウスコイン」への本格参入を表明している。Jコインの決済システムを流用することで、開発費用や期間が圧縮できる点を武器に事業会社へ営業をかけ、2023年度には年間数百億円規模の決済利用を掲げる。にゃんPayはその初号案件だ。

にゃんpayの決済画面
にゃんpayの決済画面。画面上に「Jコイン」の文字は見当たらない(記者撮影)

元々ヤマトは独自の電子マネー「クロネコメンバーズカード」を展開しているが、営業店に設置している専用端末などでしかチャージができない点が課題だった。そこでヤマトの公式アプリ上にJコインのシステムを組み込んだ結果、どこにいても銀行口座からのチャージやスマホでの決済ができるようになった。

にゃんPayの次に実現したのが、パナソニックのEV(電気自動車)充電サービス「everiwa(エブリワ)」だ。スマホアプリ上でEV充電器の利用予約や代金決済ができるが、こちらもJコインの決済システムを流用している。

予約を行った時点で利用相当額を残高から差し引くことで、支払いが行われないまま充電器が利用される事態を防ぐ。こうした仮払いシステムは一般のスマホ決済サービスでは難しく、「ハウスコインで設計する必要があった」(岡村氏)。

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