開業医が抱く危機「コロナ5類で診る医師は減る」 現場からの声「院内感染対策は弱められない」

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普段から医療機関にかかっており、その医療機関の名前が自治体のホームページで発表されている「発熱外来」一覧表などに載っていれば、ある意味ではその医師は「良いかかりつけ医」だったと言えるかもしれない。

だが、普段、医療機関にかかっていない場合はどうしたらいいのだろうか。筆者も発熱外来一覧表を見たところ、「かかりつけ患者以外も対応可」としている医療機関は多くはなかった。

この問いに対し、谷口医師は「この3年間、同じ質問を大勢の方からもらった」と振り返る。

「良いかかりつけ医」を見つけておく方法としては、“不眠、下痢など軽い症状でも、健康診断での異常でも構わないので、それを生涯のかかりつけ医を見つけるチャンスと捉え、まずは医療機関を受診してみる”ことを挙げた。

その医師が「良いかかりつけ医」かどうかを見分ける方法の1つは、“何でも相談できること”だ。谷口医師は言う。

「診察して、必要があれば専門医を紹介するのが総合診療医であるかかりつけ医の役割。どんな病気や症状であっても、良いかかりつけ医は『診られないから自分で医師を探せ』とは言いません」

入院先が見つからない可能性も

5類に移行し、保健所の入院調整がなくなった後、太融寺町谷口医院はどのように入院先を探すのだろうか。「病院に頼み込むしかないですね」と谷口医師は話す。

「当院の場合、コロナ前から日本語のできない外国人やHIV(エイズウイルス)陽性者、薬物依存症の患者さんなどは入院先を探すのに苦労していました。2類相当の間は保健所のおかげで、これらの人たちが拍子抜けするほど簡単に入院できましたが、これからは以前の苦労が戻って来ることになります」

5類移行を前に谷口医師に訴えたいことを聞いた。

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「皆さんに言いたいのは、自分の意見を他人に押し付けないでくださいということです。例えば、抗がん剤を飲んでいたり、HIV陽性で重症化リスクがあったりする人は、見た目にはわかりません。そんな人たちに『コロナは終わったのに、なぜマスクを外さないんだ?』などと言うのはハラスメントです」

「コロナに関してはいろいろな考えがあります。誰もあなたを否定できないのと同じように、あなたも異なる考えの人を否定すべきではありません。あなたやあなたにとって大切な人が困ったときには、かかりつけ医に相談してください」

Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks

谷口恭(たにぐち・やすし)
太融寺町谷口医院院長
1991年、関西学院大学社会学部卒。4年間の商社勤務を経て、大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部入学。タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医に影響を受け、帰国後、大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。2007年から現職。大阪公立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
井上 志津 ライター

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いのうえ しづ / Shizu Inoue

東京都生まれ。国際基督教大卒。1992年から2020年まで毎日新聞記者。現在、夕刊フジ、週刊エコノミストなどに執筆。福祉送迎バスの添乗員も務める。WOWOWシナリオ大賞優秀賞受賞。著書に『仕事もしたい 赤ちゃんもほしい 新聞記者の出産と育児の日記』(草思社)。

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