これに対して医療側のメリットは「とくにない」という。
「高齢者や妊娠後期の女性、持病(慢性腎臓病、糖尿病、高血圧など)がある重症化リスクの高い人にとっては、コロナは依然として『死に至る病』なので、院内感染予防の基準を弱めることはありません」(谷口医師)
引き続き発熱者には発熱外来の枠で来院してもらい、検体採取時には医療側はN95マスク、フェイスシールド、PPE(防護服)を着用することになるという。
医療側のデメリットは?
デメリットについては、こう指摘する。
「当院のような診療所からすると、これまでは2類相当だったからこそ、重症化し、入院が必要な患者さんは保健所の調整で入院できた。しかし、5類では保健所の調整がなくなるので、“入院が必要なのに入院できない”という事態が起こる」
診療も同様だ。5類に移行すると、コロナ患者の診療が一般の医療機関に広がるため、「コロナかもしれないのに、どこにも診てもらえない」という問題が解消されると期待されているが、「5類になっても診ない医師は診ない。むしろ診る医師は減る」と谷口医師は断言する。
太融寺町谷口医院が最初に発熱外来を開設したのは、2020年1月末。中国から帰国直後に発熱し、どの医療機関にも診てもらえないので診てほしいとの依頼を受けたときだった。
その後、1年近くの間、「かかりつけ医から見放されて『受診したいなら自分で探せ』と言われた」と、泣きながら、あるいは怒りながら来院する人が後を絶たなかったという。その状況はコロナが軽症化したことや補助金などの優遇措置が始まったことで少しずつ改善されたものの、「結局、診ない医師は診なかった」と谷口医師は話す。
「当初は患者を見捨てる医師が存在することが信じられませんでしたが、次第にそんな非情な医師は少なくないのかもしれないと思い直しました。困っている患者を自身で診る(または紹介先を探す)のか、突き放すのかは、その医師の『マインド』なのです。どんな制度ができても、見捨てる医師は何か理由をつけて見捨てるでしょう」
5類移行後、優遇措置がいずれなくなれば、感染対策が必要なコロナ患者を診れば診るほど経営上、医療機関は損をすることにもなる。
「それでもコロナ患者を診続けようと考える医療機関がどれだけあるか、疑問です」(谷口医師)
では、私たちはどのように対策すればいいだろうか。
【対策①】抗原検査キットの常備
谷口医師がまず勧めるのが「新型コロナ・インフルエンザ同時抗原検査キット」の常備だ。昨年12月から薬局やインターネットで販売されており、今は夏のインフルエンザも珍しくないため、同時検査キットを備えておくと安心だ。
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