2輪車のショーが妙に「落ち着いてしまった」ワケ 東京モーターサイクルショーで覚えた違和感

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オフロード車「Vストローム SX」を中心に展示するスズキのブース(筆者撮影)

昨年と比べて、どこか雰囲気が違いますよね――。

海外2輪車ブランドの関係者が、第50回「東京モーターサイクルショー」(2023年3月24~26日、東京ビッグサイト)の会場内を見回しながら、そうつぶやいた。たしかに、昨年と比べて、場の雰囲気が“落ち着いた”ように感じる。

ただし、来場者数で見ると、今年は昨年より増えている。主催者発表では、2022年が12万3439人だったのに対し、2023年は13万9100人となっている。

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しかし、それ以前の様子を見てみると、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症への対応から開催が中止されているが、2019年:14万9524人、2018年:14万6823人と、今年の実績を上回っていた。

とはいえ出展社数では、2018年:135社、2019年:153社、2022年:153社、そして2023年は166社と、増加している状況だ。

では、なぜ今年は“場が落ち着いた”のか。筆者は、2輪車業界で起きた“体質の変化の経緯”が関連しているとみている。キーワードは「ライフスタイル系」だ。

スウェーデンのEVバイク「CAKE」も展示。日本ではゴールドウインが販売権を持ち、2023年から販売開始(筆者撮影)

なお、本稿では道路交通法上の原動機付自転車、普通自動2輪車、大型自動2輪車といった車両区分や、オートバイ/バイクと呼ぶ乗り物の総称として、メーカーの業界団体である一般社団法人 日本自動車工業会が使う「2輪車」という表記で統一する。

日本の「2輪車の歴史」から考える

時計の針を戻してみよう。1940~1950年代、2輪車は庶民の足として、また商用車として普及。1960年代半ばになると、2輪車メーカーが乱立する。そして、1960年代後半から1970年代に入ると、庶民の移動手段が自家用4輪車に移行し始めたことで、2輪車の需要は頭打ちの状態になっていく。

そうした中で注目されたのが、1970年代後半から1980年代にかけて一世を風靡した、主婦や若者を狙った原付(排気量50ccの原動機付自転車)だ。

1976年 ホンダ「ロードパル NC50」(写真:本田技研工業)

ホンダ「ロードパル」を皮切りに、ヤマハ「パッソル」「パッソーラ」など多彩なモデルが発売された。筆者も当時、そうした原付を複数所有し、日常生活でフル活用していたものだ。

この時期は、原付事業や海外事業などで、ホンダとヤマハがしのぎを削っており、両者の頭文字を取って「HY戦争」や「YH戦争」と呼ばれた。今となってはどちらでもいいが、当時は2社の表記の順番をどうするかといった、細かいところまで気にする業界関係者が少なくなかったものだ。

次ページ1990年代「ビッグスクーターブーム」からライフスタイル系へ
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