2輪車のショーが妙に「落ち着いてしまった」ワケ 東京モーターサイクルショーで覚えた違和感
一方、ヤマハでは新たなる販売方法を模索し、中核となる売り場面積が広い店舗の開発を進めた。それにともない、これまでオイルなどの消耗品やヘルメットをはじめとした「アクセサリー」という分野をブランド戦略として抜本的な見直しを図る。
アパレル事業を展開したりスマートフォンのアプリによるプッシュ型の情報発信を行ったりと、「こと売り」に積極的な投資をするようになった。
こうした日本の2輪車メーカーによる一連の「ライフスタイル系」ビジネスへの転換と、多様な輸入2輪車ブランドの日本市場への商品展開によって、日本の2輪車市場はユーザーにとって「ワクワクする場」へと転換していったといえる。
そんな中で、1980年代や1990年代に20~30代で2輪車に乗っていた人が、50~60代になって、“大人買い”によって再び2輪車に乗り始めたり、女性ライダーが徐々に増えたりしたことで、ユーザー層の拡大につながっていった。
これが時期的にコロナ禍と重なったことで、人との接触を避けて“自分らしいライフスタイル”を追求するようになり、「楽しい場」として2輪車全体の売り上げが急速に拡大したのではないかと考えられる。
しかし、そうした業界変化とコロナ禍との化学反応は、そろそろ終焉を迎えるようだ。
電動化への展開で業界はどうなるか
「昨年(2022年)の後半ごろから、新車販売が以前の好調だったころのような緩やかな成長に変わってきた」という声が、今回の東京モーターサイクルショーの出展社の多くから聞かれた。
たしかにコロナバブルは終わったのだろうが、2輪車市場全体としての基礎体力は2010年代後半と比べて各段に強くなっている印象があり、今後も安定的な成長が十分見込まれると感じる。
その他、2輪車の電動化については、海外ブランドによる「ライフスタイル系」電動2輪車の登場、日本メーカーによる商用での活用、さらに交換式バッテリーによる多様なモビリティとの連携といった流れは起きているものの、2輪ユーザーの需要に幅広く対応する状況には達していない印象があり、各メーカーの展示は控えめだった。
この分野が5年後、または10年後に、どのような形で電動2輪車が「ライフスタイル系」へと進化していくのか、その行方をこれからもウォッチしていきたい。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら