G7外相会合の対中国方針「幸先がよい」と考える訳 岸田首相の言動に注目集まる「広島サミット」

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実際、中国は3月から4月にかけて、一気に日米欧などに対する攻勢を強めている。簡単にその一部を紹介する。

G7広島サミット

中国にとって最悪なのは、日米欧に韓国や台湾などが結束し、東アジアにNATO(北大西洋条約機構)のような軍事同盟が誕生することだといえる。最近の動きからは、それに抗おうとする姿が見えてくるようだ。

アメリカはどう巻き返すのか

アメリカはどうだろうか。2013年、当時のオバマ大統領が「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と公言してから10年。アメリカは世界の紛争や戦争に介入する人的・金銭的コストに苦しみ、台湾周辺での戦力は今や中国を下回っている。

G7広島サミット

また、ここへきて国防総省の機密文書の大量流出問題も発覚し、同盟国や友好国の信頼を失墜させてしまっている。

先ほど示したように、中国が行ったサウジアラビアとイランの仲介についても、そして近頃、中国をにらんでフィリピンやベトナムに頻繁に接近していることも、「America remains indispensable」(アメリカは不可欠な存在のまま)などといわれてきた時代の姿とは大きくかけ離れている。

こうした中で開催されるサミットの首脳会議は、中国が「陰の主役」になることは間違いない。ホスト役である岸田首相の言動に注目が集まるのはもちろんだが、来年のアメリカ大統領選挙で再選を目指すバイデン大統領のリーダーシップにも着目したい。

さらに言えば、先に中国で習近平総書記と会談した後、「欧州は米中への追従を避け、台湾をめぐる自分たちと無関係の危機に巻き込まれてはならない」と発言したフランス・マクロン大統領の立ち回りにも注視したい。

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清水 克彦 政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師

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しみず かつひこ / Katsuhiko Shimizu

愛媛県生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。在京ラジオ局に入社し政治・外信記者。米国留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。著書は『日本有事』(集英社インターナショナル新書)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)など多数。

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