G7外相会合の対中国方針「幸先がよい」と考える訳 岸田首相の言動に注目集まる「広島サミット」

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長野県軽井沢町に掲げられたG7外相会合の垂れ幕(写真:筆者提供)

2日目の討議でも、ロシア支援の懸念が強まる中国を念頭に、連携して対応する方針を明確にし、先に述べたインドとの協力、インドネシアなどへの関与を強化する方向性が固まった。外務省関係者は、「首脳会議に向けて幸先のよい会合になった」と語る。

ちょうど、初日の4月16日は、合意形成のキーマンとなるアメリカのブリンケン国務長官とフランスのコロンナ外相の誕生日であった。

ここで、林外相がアップルパイで外相らをもてなし、場を和ませたことが、「中国による一方的な現状変更の試みに強く反対する」や、「ロシアに即時かつ無条件でウクライナからの撤退を求める」といった共同声明の発表、言い換えれば、日本政府が目指していた強いメッセージの発信につながったのかもしれない。

科学技術相会合もカギとなる

5月12~14日、仙台で開かれる科学技術相会合も重要だ。

日本からは高市経済安全保障担当相が出席するが、これまでに判明した共同声明の原案によれば、この会合でも、中国の動きに釘を刺す内容が盛り込まれる可能性が高い。 それは、中国が「開かれた研究環境を不当に搾取している」というものだ。

中国は2008年、胡錦濤総書記の時代から世界トップの科学技術強国を目指し、外国から優秀な人材を集める「千人計画」と呼ばれるプロジェクトを実施している。招致されるのは主にアメリカや日本など海外に留学し研究者として成功を収めた中国人だが、外国籍の研究者も含まれ、10数年で集めた優秀な人材の数は「千人」どころか数千人規模にのぼるとされる。

アメリカや日本は、「中国が招致した人材から研究成果を吸い上げ、情報を統制して、それを軍事に転用している」とみている。科学技術相会合で発表される予定の共同声明は、こうした動きを強く牽制する狙いがあるとみられる。

筆者はこの会合で、近年顕著な中国の「北極圏進出」に関しても強い懸念を示すとみているが、そうなれば、欧米よりも中国に近い距離にある日本にとっては、心強い成果になるだろう。

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