「外国人労働者が消えた」インバウンド復活の裏側 宿泊・飲食業界の8割で人材不足が加速している
これまで留学生の中には、もっぱら働くことが目的の学生が存在した。日本に行って稼ぎたいが、就労できる在留資格は簡単には取れない。そのため在留資格が比較的とりやすい、留学生の身分で日本に来る若者が多くいたのだ。こうした学生は「出稼ぎ留学生」と呼ばれ、宿泊や飲食サービス業の貴重な戦力になっていた。
だが2019年に「特定技能」という在留資格が誕生し、この資格をとれば正面切って出稼ぎができるようになった。身分や目的を偽って留学生にならなくてもよくなったのだ。これにより、今までであれば出稼ぎ留学生になっていた層が、これからは特定技能外国人として日本に来るようになる。留学生の数は、間違いなく減ることになるだろう。
ちなみに、出稼ぎ留学生の多くが宿泊や飲食サービス業を選んでいたのは、留学生の立場でアルバイトをするのに好都合だったという側面が強い。特定技能外国人として働くのであれば、仕事の選択肢は他業種にも広がる。そうなると、宿泊や飲食サービス業を第一選択肢にする人は、それほど多くはないだろう。
以上の理由から、宿泊・飲食サービス業の外国人雇用はこれからどんどん難しくなっていく。募集をかけても応募がこない状況は、外国人スタッフに関しても同様になるはずだ。
日本人が集まらない場所で外国人だって働きたくない
最近まで、日本は経済大国であり、観光大国でもあるがゆえ、「日本に来たがる外国人は多い」という見方をしている人が大半だった。外国人技能実習生の待遇をめぐるさまざまな問題も、そうした意識から生まれたものも多いだろう。しかし時代は変わり、日本を取り巻く状況は一変している。
こうした状況を打破するには、まずは日本人が働きたいと思う職場づくりをしていくことに尽きるだろう。日本人が集まらないなら外国人を雇う、と短絡的に考えるのではなく、日本人が応募したくなるような職場環境に見直すこと。客単価を上げて利益を確保し、スタッフの待遇改善や働き方改革を実現していく。これが基本となる。その積み重ねが、外国人労働者の安定的な雇用にもつながる。
選択肢の多いアジアの若者が、日本人が集まらない職場で働きたいと思うわけがない。「魅力ある日本」を築き上げるには、日本人にとって魅力ある国であること。そこを目指していかなければ、インバウンド需要に対応することはもちろん、日本復活の道は難しいだろう。
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