「外国人労働者が消えた」インバウンド復活の裏側 宿泊・飲食業界の8割で人材不足が加速している

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宿泊や飲食サービス業の多くは、コロナ禍の休業や業績不振で泣く泣く従業員を解雇してしまった。そのため、メインプレーヤーがことごとくいなくなっている。客数の急回復を受けて態勢を立て直そうにも、そう簡単には対応できないのだ。

そしてこの3年間で、この業界は雇用が不安定という印象がすっかり定着してしまった。いったん他業種に移った人材が、また戻ってくる見込みは薄い。もともと、処遇が低いわりに仕事がハードというイメージを持たれがちな業界でもある。前出の京都の旅館では、「今は時給1300円でもパートの応募がこない状況」だという。

宿泊・飲食サービス業に外国人が集まらないワケ

日本人が集まらないのなら、「外国人でもいいので採用したい」と考える企業は少なくない。観光業界の多くは、人と人とが接するサービスで成り立っている。無人化や自動化を図り、人手をかけない方法をひたすら追求するのは本末転倒になりかねない。業務効率化は検討しつつも、まずは人員を確保できる手段を模索しようとするのは当然だろう。

この点、外国人労働者を採用すれば、たとえ言葉の壁はあっても頭数は揃えられる。加えてインバウンド客へのサービス体制を整えていくうえでも、英語のできる外国人スタッフは貴重な戦力になるはずだ。

全国で100店舗以上を展開する、外食チェーンに勤めるM氏がこう同調する。

「当社ではもう日本人からの応募には期待していません。2022年から完全に外国人雇用に舵を切りました。今のところ何の問題もありません。みんな一生懸命働いてくれますから。最近、日本語が通じないインバウンド客が増え始めているのですが、外国人スタッフが接客応対の救世主になっています」

この外食チェーンのように、外国人雇用に傾斜する企業が最近増えている。はなから外国人だけをターゲットに、採用活動をしている企業も決して珍しくはない。

だが、いまや外国人の雇用は、以前ほど応募者が押し寄せる状況ではなくなっている。とりわけ宿泊・飲食サービス業は、これから採用が難しくなる可能性が高い。その理由は大きく2つある。

(1)日本で働く魅力が下がっている
(2)外国人留学生が減っている

 

(1)日本で働く魅力が下がっている

近年、就労先としての日本の魅力が下がっているといわれる。前出のM氏も、現地採用のためにベトナムに行った際に、こんな変化を感じたという。

「日本の人気が明らかに落ちていますね。コロナ前は、1つの現地機関に頼めばすぐに20人くらいの就労希望者を集められたのですが、今は4つの現地機関に声をかけて何とか20人集められるくらいです。日本以外の国を目指す人がかなり増えているようです」

ベトナムでは台湾で働く若者が増えており、オーストラリアや韓国、中東諸国とも、新たな労働者の受け入れ協議が進められている。就労先の選択肢は着実に広がっているのだ。

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