「外国人労働者が消えた」インバウンド復活の裏側 宿泊・飲食業界の8割で人材不足が加速している
その他にも、円安の進行や他国と比べた給与水準の低さによって、「日本に行っても稼げない」という評判が確実に広まり始めている。残念ながら、ベトナムにかぎらず他のアジア圏でも、日本で働きたいと考える人は減りつつあるのが実状だ。
もちろんこれからも、文化や生活環境に憧れて日本に来る若者はいるだろう。だが少なくとも、日本で働くための在留資格の条件を緩和すれば外国人労働者が押し寄せてくるという時代は、すでに終わっていることは間違いない。
これまで観光業界は、留学生アルバイトに大きく依存してきた。2021年の独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のデータをみても、宿泊・飲食サービス業が留学生のアルバイト先の4割近くに及んでいる。
だが、コロナ禍で留学生がいなくなってしまった。2022年5月時点の留学生の数は23万1146人。3年前に31万人以上いたことを考えると、ずいぶん目減りしている。
当然ながら、留学生アルバイトもすっかりいなくなっている。このあたりの実状について、関東圏で50店舗以上を展開する、焼き肉チェーンに勤務するK氏に話を聞いた。
「コロナ前は全店で常時300~400人くらいの留学生アルバイトを雇っていましたが、今は50人くらいになっています。最近いくつかの日本語学校に掛け合ってみましたが、全然応募がこないですね。そもそも在籍者がいなくなっているようなので仕方ないのですが……」
確実に「日本に来たい外国人の若者」は減っている
この話、これから留学生の数がV字回復するのであれば問題はない。だが、日本に対する憧れが低下している今、おそらく留学生の数が当面大きく増えることはないだろう。今後、以下の2つの「減少」が見込まれるからだ。
これまで日本語学校を卒業した留学生は、8割がた日本の高等教育機関に進学していた。いきなり大学に進学するケースもあるが、日本語学校から専門学校、大学と段階を踏んで進学するケースのほうが多い。
ところが、コロナ禍で日本語学校の入学者が激減してしまった。2019年に8万3811人いた日本語学校在籍者が、2022年5月時点で4万9405人まで減少している。この3年で人数が半分近くになったのだ。そして入国制限が解除された今も、入学者がかつての水準に戻りそうな勢いは感じられない。
つまり日本語学校の生徒数が減ったということは、そこから専門学校、専門学校から大学に進学する留学生は、これから間違いなく減っていく。そしてこの状況は、一時的なものではなく当面続く可能性が高いのだ。
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